第20話:天狼覚醒
第20話:天狼覚醒
兗州の戦いは、終わった。曹操は、その支配を、盤石なものとした。
そして、劉星もまた、この戦いを通じて、多くのものを得た。
将軍としての地位、飛翼という字、そして、何よりも、かけがえのない仲間たちとの、揺るぎない絆。
彼は、戦いで亡くなった天狼隊の隊員たちの墓の前で、静かに、手を合わせた。
「お前たちの死は、決して、無駄にはしない」
父・曹操への憎しみは、まだ、消えてはいない。だが、それだけが、彼の全てではなくなっていた。
この乱世で、自分は何を為すべきなのか。何を守るべきなのか。
郭嘉の問いが、再び、彼の胸に蘇る。
(俺が守りたいもの…)
彼の脳裏に、母の顔、叔父の顔、そして、新たに加わった、天狼隊の仲間たちの顔が、浮かんだ。
そうだ、俺は、彼らのような、力なき者たちが、理不尽に、誰かの都合で、命を落とすことのない、そんな世の中を作りたいのかもしれない。
(そのためには、もっと、力が必要だ…)
劉星は、真新しい「天狼」の旗を、握りしめた。
旗に描かれた、月に向かって咆哮する狼は、まるで、彼自身の、魂の姿のようだった。
乱世の渦は、彼を、否応なく、その中心へと、引きずり込んでいく。
次なる戦場は、どこか。
劉星は、来るべき本当の戦いを前に、不敵な笑みを浮かべた。
「面白い。相手にとって不足はない」
天狼、覚醒す。