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第19話:飛翼

第19話:飛翼

張遼との出会いを経て、劉星は、自らの武と、天狼隊の戦い方を、さらに磨き上げていった。

彼らの神出鬼没なゲリラ戦は、呂布軍を、大いに苦しめた。食料を焼かれ、伝令を討たれ、呂布軍は、じわじわと、その力を削がれていく。

「劉星め、あの忌々しい狼の子が!」

呂布は、苛立ちを募らせた。

やがて、戦況は、曹操軍に、大きく傾き始めた。

追い詰められた呂布は、最後の決戦を挑むべく、全軍を率いて、定陶ていとうの地で、曹操軍と対峙した。

兗州の覇権を巡る、最後の戦いが、始まった。

この戦いで、劉星と天狼隊の働きは、まさに、神がかっていた。

彼らは、本隊の側面を駆け抜け、敵陣の、最も手薄な箇所を、一点突破。そして、混乱する呂布軍の、背後へと回り込み、その指揮系統を、完全に麻痺させたのだ。

劉星は、自らも先頭に立って戦った。敵陣の中を、まさしく飛ぶが如く駆け抜け、敵兵をなぎ倒し、味方を鼓舞し、戦況を有利に変えていく。

その姿は、一人の武将というより、戦場そのものを支配する翼を持った何かのようだった。

庁舎の物見櫓からその姿を見ていた夏侯惇は、思わず息をのんだ。

「…翼…」

夏侯惇は、無意識に呟いていた。「そうだ…まさしく、天を翔ける翼のようだ…」

その呟きを、隣にいた郭嘉が聞き逃さなかった。

「飛翼…」

郭嘉は、その言葉を口の中で転がし、にやりと笑った。

「面白い。実に良い響きだ。劉星殿に、これほど相応しい呼び名はない」

天狼隊の活躍により、呂布軍は、ついに総崩れとなった。呂布自身は、張遼らに守られ、命からがら、東の徐州へと落ち延びていった。

戦いが終わり、曹操は、論功行賞の席で、劉星を呼び寄せた。

「劉星よ。此度の戦、お前の働きは、実に見事であった。よって、お前に、あざなを与える」

曹操は、満座の将の前で、宣言した。

「劉星、字は飛翼ひよく。これからも、我が軍の翼として、その力を、存分に振るうが良い」

劉星、字は飛翼。

彼は、この戦いの中で、自らの力で、仲間たちの手によって、その名を、勝ち取ったのだ。

一人の少年が、英雄への階段を、大きく、一歩、踏み出した瞬間だった。

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