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 モップをじゃぶじゃぶとバケツに浸す。それから床に下ろしてゴシゴシこする。大して汚れていない場所を、さも汚れているかのように磨き上げる。


 この仕事にも慣れてきた。朝は早くないし夜も遅くない。日が昇ったころに掃除道具一式を持ってこの冒険者ギルドのクエスト管理棟までやってきて、日が暮れるころまで棟内のあちこちを磨いて回るだけ。

 たまに、飲み物をこぼしたとかで要請があれば駆けつける。


 彼女と初めて口をきいたのは、そんな要請がきっかけだった。あのときは、冒険者がクエストをもらいにやってくる一階の受付カウンターに猫が上り、カウンターの上の花瓶を落として割ったんだった。


『お手間をかけて、申し訳ございません』


 彼女は最敬礼が好きなヒトだ。別に仕事だから、やって当然なのに。

 そう伝えると、体を起こした彼女は困ったように首をかしげた。


 左胸のネームプレートには『セシリー』とあった。それが彼女のファーストネームなのかファミリーネームなのか、僕にはわからない。この管理棟でネームプレートを付けているのは受付嬢だけだし、この管理棟の受付嬢は彼女だけだ。


 僕は彼女のことを何も知らない。

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