憑依した亡霊は、廃品回収業と聖なる肉体で世界を修復する

3話

頭の中が急に混乱し始めた。

整然としていた糸巻きを愛猫が好奇心で触ってぐちゃぐちゃに解いてしまったような感覚が、俺の頭の中を埋め尽くし、さらに混乱を増していた。

「サワサワ」

到底信じられない目の前の状況。俺は両手を動かして顔に触れた。

すると、鏡の中の見知らぬ顔の青年も俺と同じ行動を取った。

あの人が本当に俺なのか!?

到底信じられず、何度も顔を触る動作を繰り返した。

しかし、今の状況が嘘であってほしいという俺の願いとは裏腹に、結果は変わらなかった。

「こ、こんな馬鹿げたことが...」

俺は一体どんな事件に巻き込まれたんだ!?

今まで自分の存在を保ってきた身体がまるで嘘のように消えた今の状況。

目の前に存在するすべての風景を俺は到底信じることができなかった。

「はあ...」

ため息をつき、自分の置かれた状況を受け入れるのが難しく、ぼんやりと座っていた時だった。

「カツカツ」

突然、静寂を破って鮮明なハイヒールの音が聞こえてきた。

遠くから徐々に古いドアに向かって音が近づいてくるのだった。

な、何と言えばいいんだ!?

俺は許可もなくこの部屋にいることについて正直に白状した方がいいかと考えた。

「うっ!」

その時だった。全く予想外の瞬間に記憶がパッと浮かんだ。

俺の中に存在しなかった記憶。

明らかに他人の記憶であるものが、水切りで跳ねた水滴のように飛び出した。

百日紅のように俺の視野を占め、現実感と共に再生され始めた。

「はっ!」

違和感と不快感が押し寄せてくる。

ほんの少しの時間が過ぎると、苦しめる感覚は嘘のように消えた。

いや、正確に言うと、元々一つであったかのように溶け込み、自然に俺が持っていた元の記憶と一つになった。

俺は...

両手を大きく開いては握るを何度か繰り返す。

さっきまでは浮ついた感じがしていた肉体の感覚が、今では俺と精神と完全に一つになったという感覚が強く感じられた。

また、以前にはなかったほど鮮明だった。

これは...

ふと浮かぶ元の持ち主が生きてきた時間の記憶、そしてお金と交換できないほど貴重な人々への記憶も難なく浮かび上がり、完全に俺のものになったことを悟らせてくれる。

今まではデミアンのものだった。しかし、これからは他の誰のものでもない。

完全に俺のものになった。俺と比べても劣悪な環境を生きてきた青年。

真面目なだけでなく、善良でもあった。

俺がこれからデミアンというのか...

自分のものではなかった記憶に戸惑いながらも、俺はすぐに、そして容易に適応を終えた。

「ギィィィ」

俺の意識が内面ではなく目の前の現実に焦点を合わせると、ちょうどそのタイミングで古いドアがゆっくりと開き、音を立てた。

部屋に入ってくるときとは異なり、足音を立てないように注意しながら一人が部屋の中に入ってきた。

「あ!」

小さく驚いた声が聞こえてきた方向に、俺はまだ鈍い反応を示す両目を動かした。

そして、部屋に入ってきた人に視線を合わせた俺は驚いた。

あ...

彼女の姿を視界に入れると、映像ファイルを再生したかのように自然に関連する記憶が急浮上する潜水艦のように浮かび上がった。

それだけでなく、感情が渦巻き、巨大な波を起こして押し寄せてきた。

目を覚まして! お願い、意識を取り戻して。坊ちゃま!

俺にデミアンという青年の記憶が完璧に溶け込んだと思っていた。

しかし、俺の考えが勘違いだと言うかのように、その時に何があったのか、彼女が切羽詰まった声で叫びながら泣いた理由を到底知ることができなかった。

美人だ!

ぱっと見では地味だと言える彼女の姿。

しかし、よく見れば誰でも過小評価だと分かるほど美しい容姿の持ち主だった。

腰まで届くほどの長い髪は、業務中だったので綺麗にまとめ上げていた。

そして、茶色の髪と対照的な青い瞳。

そして、女性らしさが十分すぎて爆発しそうな身体と、健康的に見える少し暗い茶色の肌。

彼女は俺の前に慎重に近づいて止まった。

「...」

彼女は何かを言おうとして唇を動かしたが、息を吸うだけでまた閉じた。

高純度のサファイアを思わせる真っ青な瞳には、さまざまな感情が交じり合っていた。

「よかった。二度と目を開けないかと思ったわ。」

永遠に感じられる沈黙の時間。

彼女はようやく口を開いた。

そして、こみ上げてくる感情を抑えきれなかったのか、突然動いた。

「ガバッ」

いつも身だしなみを怠らない彼女の体臭が濃く漂ってきたかと思うと、クラウディアは俺の体をぎゅっと抱きしめた。

音もなく体を震わせてすすり泣く彼女。

切なく泣く彼女の体を、俺は慎重な手つきで抱きしめた。

「はあ...」

時間が経ち、感情が落ち着き、恥ずかしい気持ちになるのか、浅いため息をつきながらゆっくりと離れた。

恥ずかしさを抑えきれず、気まずい顔をしたクラウディアは、何度か躊躇った後、再び口を開いた。

「以前おっしゃっていた計画をそのまま進めるおつもりですか?」

「それは...」

突然、俺が知らないことについてクラウディアが尋ねると、言葉に詰まってしまった。

俺が戸惑っていることに気づかなかったのか、クラウディアは話し続けた。

「そうでなくても騒がしい時なので、その者を呼ぶ方が少しはスムーズに進むのではないでしょうか?」

「その者は...」

俺がどもりながら話すと、ようやくクラウディアは異変に気づいたような顔をした。

「一体誰のことを言っているのですか?」

「あ...」

クラウディアは自分が持っていたすべてを失った人と同じような顔をした。

「よろめく」

バランスを保てず、地面に崩れ落ちそうになる彼女の体を、かろうじて支えた。

ついさっきまで安堵と喜びに満ちていた美しい彼女の顔に、否定的な感情が急激に浮かび上がる。

「ガシッ」

よろめきながら危うく動く体で俺に近づいてきた彼女は、俺の額に自分の左手を。

自分の額に右手を当て、体温を確かめる。

自然に見える彼女の瞳は、不安を隠しきれずに震えていた。

「うん...」

何かを言おうとして突然閉じた真っ赤な唇から、彼女が最も望まなかった状況が現実になったという感情が感じられた。

「...」

そうして俺。

いや、かつてはデミアンのものだった肉体の状態を確認するという目的をクラウディアは達成した。

そして、彼女は部屋の片付けを素早く済ませ、退室する。

「ゆっくりお休みください。坊ちゃま。」

夕食の時間になったらまた戻ると言って。

絶望と後悔、そして悲痛な感情がはっきりと感じられる彼女の後ろ姿は、俺の前からゆっくりと消えていった。

「無駄なものは何もなかった...」

門外漢の目には急いで片付けを終えるように見えるほど荒い動きだったが、どこか雑に片付けられて乱れたところは見られなかった。

「こんな時ではない、早く確認しなければ。」

クラウディアの突然の登場により、まだ中にどんな情報が入っているか分からない魔道具に向かって俺は手を伸ばした。

いや、伸ばそうとした。

「ポン」

手が道に置かれていたメモ用紙に自然に触れてしまった。

意図していなかったが、俺の視線は急ぎを反映して走り書きされた数枚のメモ用紙に。

当日の事件が載っている新聞の切り抜きに向かってしまった。

『ベルガルト近郊で商人が怪集団に襲われ、命だけは助かった!』

と書かれた記事の横に置かれたメモ用紙には『都市の外で不運な動きが見られる。』

と記されていた。

「ふむ...」

俺と何の接点もない遠くの事件だと片付けたので、そんな反応を示すしかなかった。

つまらなそうな声を出した俺は、次の切り抜きに視線を移した。

『マナ結晶の価格が暴騰! 偶然か? 誰かの介入があるのでは?』

『密売が増えた。』

「ん?」

見慣れた単語が見えると、俺は戸惑いを感じると同時に、冷水を浴びたように意識が覚醒するのを感じた。

次の内容が気になった俺は、素早く手を動かした。

『辺境の村々で人々が消えている。』

そして、その横には赤いインクで何度も重ねて書かれた太い文字が記されていた。

『教団が動いている。ぐずぐずしている時ではない! 決断を下さなければならない!』

そして、この後から今に至ったという事実を、俺は難なく推測することができた。

「何がどうなっているんだ?」

さっきと同じように記憶が一つになっていれば、ずっと楽だろうと少し不平を言った。

「ドタバタ」

何か騒がしい音と共に、声が遠くから聞こえてくる。