第0話
ガバッ
はぁはぁ、はぁはぁ、は?なんで森に居るんだ?
周りを見渡してみると真っ暗闇の森の中
「死んだわ、寝よ」
目を閉じ、勢いよく横になる...ゴッ
「痛ッ、頭が痛い」
森の木々から差し込む薄暗い光の中、そこには痛みの原因だろう岩があった。
「これが原因か、というか気絶してたのか。」
周りを見渡す、ある程度開けた場所
草と周りの暗さも相まったせいか、かろうじて認識できる道があった。
立ち上がりふらふらとした足取りでその道を進んでいく。
たどり着いた場所は木の柵があり、その奥に馬小屋付きの大きな木造の家があった。
木の柵を越え馬小屋に侵入した。
麦藁を目の前にし、慣れない森を歩いたせいなのかそこで意識を失った。
ペロッペロッ
うぅ
ペロッペロッ
はっ
「ちょっ、やめて」
ヒヒーン
巨大な馬のせいで顔がベタベタだ
馬小屋の入り口に厩務員らしき五十代後半の老けた男が入って来た。
「なっ」
自分を見つけて驚きの表情をし、何処かへ駆けていってしまった。
まず、ベタベタな顔を拭おうと手を視界に入れた。
「小さくなってる!」
「う~ん、何歳ぐらいだ?七、八歳ぐらいかな?」
細かいところまではわからない、子どもを見比べたことも無いし。
そんなふうに考えを巡らせて居たところ、先ほどの老けた男が三十代の貫禄を持った男を連れてきた。
突然、貫禄を持った男は驚きと物悲しさを含んだ声で言った。
「君は誰だ?」
急にやって来ての質問に驚いたが、返事をしようとしたその時
困惑が脳を包み込んだ。
自分が誰か分からなかった。
だが返事をしようと声を出した。
「分かりません。」
貫禄を持った男はその悲しさを振り払うように言った。
「そうか」
手を伸ばしながら
「私はロンド・バートン、男爵家当主だ。急にこんな事を言われても理解しがたいだろうが、君が独り立ち出来るまで私の家に居てくれまいか。」
困惑が脳を包む中、自分の状況下で選択肢が無いことをはっきりと理解し、ロンドの手を取った。
「良かった」
ロンドはそんな目に見えた安堵の顔を浮かべた。
「お腹が空いているだろう、今から屋敷に戻って食事を用意させるとしよう。身体も汚れているな風呂も用意しておこう。」
「ダウスよ、行け。」
どうやら老けた男はダウスと言う名前らしい
「はっはい承知致しました。」
ロンドに連れられてあっという間に屋敷に着いた。
「お帰りなさいませ」
と中年のメイドが言い、顔を挙げた。驚いた表情をしたがすぐさま冷静になり
「汚れているご様子、まずは身体を洗ってからお食事になられてください。」
ロンドは先に食べさせたかったようだが、説得され先にお風呂に入る事になった。
「一人でできます!」
人に洗われるのは嫌だったので断った。
こんな短時間で料理ができると思わなかったので少々驚いたが食卓に着いた。
食べる前に長い食卓を挟んだ向かいにいるロンドに向けて疑問を吐き出す。
「なぜ自分にこんなに親切にしてくれるのですか?」
「畏まらなくていい、普通に話せ。すまないがその質問には答えられない...」
「その代わりに名前は勿論分からないのだろう?」
「はい」
「ならば私が付けよう、今から君はエルドだ。」
「分かりました。」
「早く食べなさい。」
知らない食べ物ばかりがあった。食事の最中
自分は何なのだろうか、前の記憶はあるのに自分の事、他の人の事は何も思い出せない、なのに何があったか何をしたかははっきりと思い出せる。
気が付いたら食べ終わっていた。
「しばらくこの屋敷で過ごしなさい、私は本邸に戻っているから。」
急いでいるらしくそう言い、その本邸とやらに行ってしまった。
しばらくたち
「どうすればいいんだろう?そうだ、あのメイドさんに聞こう!」
食堂道を出て直ぐにあのメイドさんを見つけた。
「あのぅ、自分どうすればいいですか?」
「 はい、当主様から様から聞き及んでおります。しばらくの間この屋敷でお過ごしいただき、この場所について講師より学んでもらいその後、本邸で過ごしてもらいます。」
「わ、分かりました」
もう色々と決まっているらしい
「 私の名前はメアルです。この屋敷に過ごす間、専属に付かせていただきます。よろしくお願いします、エルド様。」
「よろしくお願いします。」
様なんて初めて付けられるけど、それについて有無を言わせない雰囲気がある。
「まずは屋敷の案内の後、エルド様のお部屋に案内させてもらいます。」
そんなこんなで案内をしてもらいながら質問したら色々わかった、ここはスーラニア国の端っこのルナイという街に近い場所に有るらしい。本邸は勿論その街にある。