表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

第9話 ヘイロン商会。

大きな深紅のバラの花束を抱えて、ヘイロンが現れたのは、私たちが席についてしばらくしてから。


「マダーム!!!」


デレデレの顔で花束をマダムに渡す。

手を取って、その手にキスを降ろす。キザだな。

しかし…驚いたのは、その花束!


「あら、シルクで出来た薔薇ですのね?香は香水?」

「マダームのために作らせました!気に入っていただけましたか?」


花びらの一つ一つが、精巧に作りこまれている。葉も微妙に色の違う緑色のシルクで本物そっくりに作ってある。これは…いいな。

髪飾りやドレスの装飾にも使えそうだ。本物の花を買うよりかなり高価になるが…。

いいな。うん。使われている香水も、朝早くのバラ園の香りの様だ。いい。


ヘイロンが席に着いたところで、マダムが立っていた私を紹介してくれた。

「こちら、ユテイニ国大公家令嬢のリーサ様。この春にエクルーズ商会のフラル支社長に就任されました。」

「リーサと申します。」

「リーサ?女の子かい?俺はまたマダムの若いツバメかと思ったよ。お人形みたいな男の子だなと思っていたんだが…ふーーん。」


ヘイロンと握手を交わして席に着くと、女の子たちが、つまみとシャンパンを運んでくる。今日はさすがに、スーは私の後ろに立っている。


「早速ですが、マダムは粗悪品の対処方法をお持ちで?うちも困っているんですよ。」


ヘイロンというのがその男の名前。家名なのかもしれない。そう呼ぶように言われたから。世間話が終わると、いきなり本題に入った。


「そうですねえ…。リーサ様はどう思われますか?」

「製品へのタグ付け。品質保証書。なんなら精巧な刺繍を入れる。あたりでしょうか?」

「・・・ありきたりだね。もうやってみたよ。通し番号もつけてみたりした。うちの商品は自信があるからね。大量に、とはいかないが。あんな粗悪品をうちの名前で売ることが許せないんだ。」

「ええ。間違いなく良い品ですね。」

「正直に…君ならどうする?」

「潰しますね。騙っている商会ごと。」

「気が合いそうだなあ。そうだよね?我慢していることもないよね?」


マダムが指の動き一つで女の子たちを下げた。

ドアの前にいる、いつもの用心棒だけ残して。


「問題は…あなたが潰したい商会の後ろ盾が、王太子妃とそのご実家のアルマン公爵家だということです。下手に動くと、王家に反逆罪で捕らえられますわね。」


「チンロン商店が、ここ2年の間に力を付けたのは、王太子妃の力添えでしょうね。元々、アルマン公爵家と繋がりがあったようですが。」


「そうなんだ。やりたい放題だよ。元々うちの商品のパクリが得意だったんだけどね。ここのところ遠慮がない。」


「王太子が許しているらしいですね?現王に似ずに、生真面目な質素堅実な方でしたが、その妃が余程お気に入りなようで。そんなに急に変わるものでしょうか?不思議ですわよね?うふふっ。」


マダムは…不思議でもないと思っているんだ。根拠はなんだろう?


綺麗に足を組んでいたマダムが、足を降ろしてほんの少し前にかがむと、綺麗に爪が塗られた人差し指を立てた。


「さて、ここで条件を一つ。この件がうまく行ったら、お力添えを頂いたエクルーズ商会にフラル国内とユテイニ国での独占販売契約、あたりでいかがかしら?」


マダム?え?それは嬉しいけど、そんだけリスクがあるってことだよね?

相手は王室だよ?


「私、切り札を一枚持っておりますの。どう使うかは、あなた方にお任せしますわ。」


マダムが振り返って、ドアの前に立つ男を見る。頷いて下がった男は、程なくしてカミーユを連れて戻ってきた。


「マダム!」

部屋に入ったカミーユはなんの遠慮もなくマダムに抱きつく。

あ…礼儀作法の勉強、やり直しだな。


「まあ、カミーユ。いい子になったんでしょう?」

柔らかくマダムが引き離す。さすがだ。


「この女の子が?マダムの切り札?」

「そうよ。」


マダムをはさんで、左右にヘイロンとカミーユ。


「カミーユに聞きたいことがあるのよ。」

「なあに?マダム?」


給仕係の格好の用心棒が、カミーユにシャンパンを持ってきた。


「あなたのお兄様、お父様に似ずに真面目な、無駄遣いしない方だったでしょう?」

「そうだね。出来の良い、真面目な方だ。」

「どうして変わってしまわれたのかしら?」

「そうだね…あの嫁が来てから?金で買った政略結婚だったでしょ?父上の小遣い欲しさだよね。兄上は浪費癖の有る嫁を心底嫌がっていた。ケチだから。予算内で暮らすように結構厳しく指導してたみたいだよ?嫁の実家が裕福だから、援助は貰ってたみたいだけどね。嫁が連れてきた侍女に聞いた。」

「・・・・・」


シャンパンを、水のように飲んでカミーユが続ける。


「何か月かしたら、急に兄上が嫁にデレデレになって…。デレデレというより、なんて言うか…へこへこ?いや、なんて言えばいいかな?すがるみたいな?

みんな、童貞だった兄上が女に溺れたんだろうって言ってた。嫁の言うことは何でも聞いてたし、嫁が気に入らない側使えは首にしてたし。」


すんごいこと言ってるけど…。


「そんな、溺れるほどの女でもなかったけどねえ。」


イチゴをつまみながら、なんてことないように言った。


「惚れ薬を使ったらしいよ?そんなの本当にあるんだね。侍女に聞いた。」


・・・《《どこで》》聞いたんだ?









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ