第17話 デート。
その日の夕方も、交代勤務のため廊下を二人並んで歩いていると、侍女が一人転んだ。弟が走り寄って、抱え起こしている。良くやるわ。
次の日にその侍女がお菓子の入った小さい籠を、弟に渡している。これもいつもの事。
カードが一枚入っている。
覗き込んで見て見ると【お待ちしております。】と、書いてあった。
「えーなになに?デート?」
カードを見ていた弟は、俺を見てくすりと笑う。
「ああ。」
え?まじ?
昼間に裏庭の散歩に行こうと誘ってきたから、珍しいなあ、と思ったら、逢引き場所でも探してた?
え?嘘でしょう?
確かに、短い銀髪の可愛らしい娘だった。お仕着せの女中服を着ていてもわかるふくよかな胸。割と好み。弟の好みは少年ぽい娘なのかと思っていたけど、違ったのかな?まあ、こいつも男だしな。ぐふふっ。
あまり見たことが無い娘だったから、わざわざ遠くの仕事場から弟の前で転ぶためにやってきたのかな?
「・・・リーサが怒るよ?」
「あ?」
「・・・・・」
その日も、滞りなく勤務。
深夜番の騎士と引継ぎをしていると、いつもより少し早い時間にやってきた王太子がドアの前で騒いでいた。
俺たちは飾り物の鎧兜と化し、何も見ていないし、聞いてもいない。4人でドアの両脇によって、事が済むのをじっと待った。さんざん騒いで、妃のドアが開けられる。これもお約束。おかげで夕方番の俺たちの勤務時間が伸びた。勘弁してほしい。
「お兄ちゃん、腹ごなしに散歩に行かないか?」
「また?」
そう言ってもどうせ暇なので、二人で裏庭に散歩に出かけた。あの女中から貰った焼き菓子は美味かったから、散歩位付き合うさ。
使用人の出入り口から出ると、目隠しのように何本か大き目な木が植えられている。ぶらぶらと歩いた。弟は時折、針葉樹の葉をちぎってポケットに入れている。
「あーなあ、本当にあの女中と逢引きすんのか?」
「ん?ああ。」
「ふーーん。」
『今日の勤務で終わりにする。きりがないからな。』
いきなり華国語?
『は?』
『今日、俺がドアを開けざるおえない状況を作る。迷わず笛を吹け。いいな?』
『そ…大変なことになるぞ?俺たち殺されちゃったりしない?』
『多分。』
『多分、て…絶対がいいんだけどお兄ちゃんは。』
折った小枝についた葉の匂いを嗅ぎながら、弟が楽しそうに笑った。




