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じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ ~数多のキャラクターを使い分け異世界を自由に生きる~  作者: 藍敦
第十六章 西都の大ダンジョン

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第二百四十七話

現在『じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ』が打ち切りの境目にいます。

一巻の紙本がまったく売れていない為です。


二巻の発売は五月なのですが、それで打ち切られる可能性が非常に高いです。

お願いします、どうか紙本を手に取ってください。

コミカライズも始まりますが、それまで持つかどうかも危うい状態です。

「え? それって何かしら? 私はメルトだよ?」


「いえ……昨年、錬金術ギルドと薬師ギルド、そしてエルクード教が運営する治療院の三勢力で、共同の事業を始めるという計画が上がりました。その中で『賢者の奇跡を現代に再現した術師がいる。彼女の為にその正体は明かせないが、これはケガや病気で苦しむ人間を大幅に減らすことが出来る』と、我々はその『神の血涙』を元に、新たな製薬工房と流通網を構築しようと、国中の教会に呼びかけを行っておりました……その際、奇跡の提供者を『聖人認定するべき』という話が持ち上がり、仮の名として、錬金術ギルドの長から聞き出した外見的特徴から『聖人白狐様』とお呼びしておりました……」


 マジか。メルトの錬金術、かつて彼女のお婆ちゃんが書いた本に記されていた素材の製法を伝えた一件が、そんな大きな事業に発展していたのか。


 だが考えてみれば……地球でも何か大きな治療法が確立されたり、凄い薬が生まれたら、偉人として後世まで名前が残っていたのだし、あり得る話ではあるのか……?


「その礎である『神の血涙』がこんな大きさでここにあるのなら……確かにこの都市には十分過ぎる量の回復薬……エリキシルの量産が可能になります。これを、この都市の教会に持ち込み、すぐにでもこちらの都市で薬が出回るようにしましょう。流石に、国も教会主導の事業に手出しは出来ません。今すぐ、こちらを提出しに向かっても良いでしょうか?」


「いいよー! 早くこのおっきな街全部に、お薬が渡るといいわねー」

「感謝致します。お礼は、必ず致します。では、私はこのまま教会に向かいます」

「分かりました。こちらも貴重なお話を聞けて助かりました」


 シアンさんは興奮した面持ちで、足早に去っていった。

 ううむ……メルトの錬金術の知識というのは、もしかしたら本当に国の在り方をかえてしまうのかもしれないな。


 ……いや、だからこそ彼女のお婆さんは、世に流通する本、オリジナルの本以外から、肝心な部分を消したのかもしれない。便利過ぎる存在が世に出回った時、それが世界に与える影響を憂慮したのだろう。


「あ、結局治癒術は見せてもらえなかった! 残念!」

「ですが、沢山の人がこれから救われるかもしれませんね」

「だね。ある意味では治癒術より凄いことをしたんだよ」

「なるほど、それもそうかもしれないわねー」


 ふむ。だが結局、件の治癒術師がスティルではなくシアンさんだったとなると、スティルはまだこの都市には辿り着いていないのだろうか?

 あいつのことだから、もうシズカの足取りを追って、ここに着いていると思ったのだが……。


 その後、俺達はスティルの痕跡を見つけることが出来なかった為、そのまま一度表の通りに戻り、今日はそのまま都市の観光に向かうことにしたのであった。




 観光をするなら、これから間違いなく多く足を運ぶであろう区画、探索者ギルドのある区画へと向かうことにした俺達は、先日来た時は気にも留めなかったが、様々な商店が立ち並ぶ様子に、改めてこの都市、この国が、ダンジョン攻略に力を入れているということを思い知らされた。


 まず、探索者の為の施設が圧倒的に多い。ダンジョンに向かう道には大量の宿が密集し、その近くには公衆浴場が幾つもあった。


 俺達は少し離れた区画だった為、空き家を借りたりと、割と余裕のある暮らしが出来ていたが、ギルドやダンジョンが近いこの区画の宿は、それはもうもの凄い客の入りようであった。


「こちらに泊まらなくて正解でしたね。あちらこちらからトラブルの声が聞こえてきます」

「賑やかねー? こんなに大勢が泊まってるなんて、毎日お祭りみたいねー?」


「実際、屋台も多いみたいだね。飲食店も多いし、ある意味では表の通りより、沢山お金が動いている区画なんじゃないかな?」


 周囲を見回りながら、俺達はあえて、もう一度探索者ギルドへと向かう。

 どうにも、この都市のダンジョンは特殊な制度があるようなので、情報を集めた方が良いと思うのだ。

 早速、今日も大盛況の探索者ギルドへと向かう。




「お! 今回は『石像破壊競争』か! ちっと地味だが、盛り上がるんだよな」

「賭けようぜ! 俺はあの、戦士のパーティに賭けるぜ」

「俺はあっちの魔術師連中だな」


 ギルド内の、休憩スペースに向かう。

 ワンフロアをまるまる使った、大きな酒場のようなスペースがギルドの三階にあり、そこで情報収集をしようと思ったのだが、何やらここにもモニターが設置してあり、その様子を探索者達が熱心に見つめていた。


「あ、動く写真のやつだ」

「映像、動画だね。モニターって扱いでいいんだよね、あれ」

「ふむ……見てくださいシズマ。あれ、今映っているのはダンジョン内の様子ですよ」


 シーレに言われて気がつく。確かによく見てみると、モニターにはダンジョンの中と思われる場所が映し出されており、そこに大勢の探索者が集まっていた。

 これは……まさか生中継なのか……? そんな技術まであるのか……?

 この映像がなんなのか、周囲の探索者達に話を聞いてみる。


「お? お前他所から来たのか。すげーだろ? この都市のダンジョンならではの仕掛けだ。大昔の話だが、ダンジョンマスターが未知の技術を探索者に提供したんだと。それが解析されて、今じゃ街中でもこういう映像が使われているんだよ。で、その大本であるダンジョンじゃあ、こうやって特定のフロアの様子をリアルタイムで見られるようにしているんだよ。まぁ、この映像はギルドかこの区画の酒場でしか見られないが」


「あれだ、所謂『試練の間』とか呼ばれてる場所の様子が映し出されてるんだよ。ここはある程度探索者が到達して、人数が揃わないと試練が始まらないんだ。で、集まったらこうして映像が流れるんだ。今は丁度、先月から募集中の試練の間が定員に達したから、その様子が映ってるんだ」


 まさかの、エンターテイメント化だった。

 どう見てもこれは、ダンジョン攻略の一部を、エンターテイメントとして外に提供しているようにしか見えない、そんな様子だった。


 まさか、このモニターや撮影技術が、ダンジョンマスターからもたらされたものだったなんて。

 どういうことだ……ダンジョンマスターの目的は、個人個人でバラバラなのだろうか?


「うーん……なんだか少し複雑ねー……」

「メルト……」

「私もダンジョンにずっといたけど、こんなふうに見世物にされていたら、嫌だなー」


 メルトが、少しだけ浮かない顔をしていた。

 ……確かに、こことは違い、メルトの場合はダンジョンに囚われていた。

 もし、それがこんなふうに見世物にされていたらと、彼女は想像してしまったのだろう。

 ……悪趣味だな。


「でも、気になるから見ていこう? 隣のテーブルが空いてるから、そこで観戦しましょ?」

「あ、ああ。メルト、大丈夫かい?」

「うん、平気よ。この映像を見て、どんな感じなのか情報を集めよう?」

「そうですね……何やら『石像破壊競争』という言葉が聞こえてきていたのですが」


 三人で席につき、映像を確認する。

 するとそこでは、確かにパーティー毎に巨大な石像が用意されており、一斉に攻撃を開始し、破壊しようと動き始めていた。


 随分と頑丈らしく、人型の像ではあるが、腕の一本も折れず、時間だけが経過する。

 試練という割には危険が少ないように見えるが……やはり純粋にこの試練の間というのは、バラエティ、娯楽として提供される為のフロアなのだろうか?


「ちょっと、過去にどんな試練があったのか周りに聞いてくるよ」


「そうですね、お願いします。私はこのまま映像を見ています。もしかしたら、何かしらのペナルティがあるのかもしれません。それが、命の危険を伴うものかもしれませんからね」


「私も見てる……おー! 魔法使いさんが石像を凍らせてから攻撃して腕を折った!」


 どうやら、すっかりメルトの気分は回復したようだ。楽しそうに、映像を見つめていた。

 なんというか……本当に地球でやっていたバラエティ番組みたいだな、こういう競争だと。

 俺は、今夢中になって映像を見ている人は避け、余裕のありそうな人間に、過去の試練内容について、何か知らないか尋ねてみることにした。




「んあ? 過去の試練が知りたいって? あー……色々あったな、今流れてる『何かを破壊する』系の試練なら、結構見かけるな。が……『映像を流すことをギルドが許可した』ものでしかないからな。結構多いぜ? ギルドが映像を止めるような過激な試練ってのも。『パーティー内での殺し合い』や『パーティ対抗での殺し合い』それどころか『試練の間全体で殺し合い』なんて過激な試練だって、長い歴史ではあったらしいぜ?」


 俺は、そんな恐ろしい話を聞かされていた。

 ……何がバラエティだ、とんでもなく悪辣なダンジョンじゃないか……。

 だが――


「つっても、俺は長年ここにいるが、そんな物騒なのは見たことがないがね。殺し合いじゃなく試合なら結構見かけるが、どのみち生傷が絶えない映像だ、ギルドに止められるんだ」


 どうやら、そこまで過激な内容のものは、今の時代では見かけないらしい。

 その事実にほっと胸をなでおろす。

 だが、こちらの話に加わる、他の探索者が『とんでもないこと』を語り始めた。


「いやぁ……一部の酒場でだけ流される『例の試練』が一番過激だろ! そろそろまたやってくれねぇかな! なあ!」


「おい……相手はまだ若いんだぞ、やめとけよ」

「え? 何の話です?」


「いいか若いの……『集団でおっぱじめる試練』みてぇなのもあるんだよ。すげぇぞ? 探索者が、凛々しい戦士が、あどけない魔術師が、恥ずかしがりながら――」


 …………oh。

 マジか。マジでそんな試練あるのか。

 なんだよ、まさか『〇ックスしないとクリアできない試練』なんてものがあるとでも言うのか!?


「……恐ろしいダンジョンだ」

「だな。ま、試練の間に辿り着かないと関係ない話だけどな。若いの、お前も頑張んな」


 そう言い残し、二人組の探索者は去っていった。

 …………嘘だろ、本当にあるのかよ……。

 どうしよう、二人も女性がいるんだぞ、俺のパーティ。

 もしそんな試練が出てきたら……。




 メルト達の元に戻ると、中継映像も佳境を迎えていたらしく、メルトだけでなく、シーレまでもが、熱心にモニターを見つめていた。


「おかえりなさいシズマ。凄いですね……今回の試練である石像、どうやら特定の方法出ないと満足にダメージを与えられないようです。氷漬け以外の方法で破壊出来たのは、鈍器による攻撃のみで、同じ物理攻撃でも、大剣の一撃ではビクともしていません」


「凄いねー! たぶん、あれって石像だけど、魔法的な仕掛けがあるんだと思う」

「なるほど、ただの競争じゃなくて、謎解き、推理や検証、そういう要素も必要なんだね」


 と、そこで、映像の中に突然文字が現れた。

 それは映像にだけ表示されているのではなく、どうやら中継中の試練の間、その空間内に現れた文字のようだ。


「ふむ、どうやら時間制限を過ぎてしまったようですね。ペナルティはダンジョンからの追放、再度挑戦するのには一月待たないといけない……と。思ったよりも軽いペナルティですね」


「そうねー? これなら私達が挑んでも、きっと大丈夫ねー? 早く定員にならないかしら」

「……いや、実はそのことなんだけど――」


 俺は、集めてきた情報を……過去に行われた試練、『殺し合い』や『アレな内容』について、二人に語った。


「ええ!? 殺し合い!? 嫌よ、絶対に嫌……!」


「そうですね、それは許容できません。ただ、少なくとも十年単位でそういう試練は出てきていないのですよね?」


「そうみたいだよ、他の人間にも聞いてみたんだ。ただ、試合形式の戦いはあるらしい」

「それならいいけど……それでシズマ『まるまる』ってなにかしら? 何をするの?」


 俺は、遠回しに『〇〇しないと出られない部屋的な試練もある』と二人に伝えた。

 無論、シーレはすぐにそれを理解し、なんとも言えない表情を浮かべているのだが、メルトは何の話か分からないのか、しきりにそれが何か聞いてきた。


「……メルト、今は気にしなくても大丈夫です。もしその時が来たら……私がなんとかします」

「??? そうなの? うん、じゃあシーレ、頑張って?」

「ええ……。シズマ、その時は『パーティで誰かが達成すればOK』だと信じましょう」

「……いやぁ、さすがにピンポイントでそんなことにはならないと思うけどなぁ」


 ……まさかですよ、シーレお姉さん。もしもの時は……その、あれですか……俺と、ですか?

 いやいやいや! 何か抜け道を探すよ! そんなことになったら!


「あ、そうだ! シズマ、ダンジョンでもらった紙、それに印が書かれるのよね? 今はどうかしら?」


「昨日の今日だしなぁ、まだかかるんじゃないかな?」


 メルトが話を変えてくれたので、それに乗っかる。

 早速ダンジョンで手に入れた紙片を確認してみると――


「まだ印は現れていないね。もう暫くはこの都市で過ごすことになりそうだなぁ」

「そっかー。じゃあ、暫くは街のいろんな場所に行きましょう!」


 こうして、俺達は腰を据えて、この都市で過ごすことを本格的に決めたのだった。

 しかしそうか……ダンジョンの一部フロアの中継に、娯楽として放送か……ここのダンジョンマスターも、かなり悪質なヤツなんだろうな。


 どんな試練が待ち受けていたとしても、それを突破出来るように考えを巡らせながら、今日はひとまずこのギルド周辺の区画を観光することにしたのであった。

(´・ω・`)二巻の発売は五月十五日の予定です。

地域によって前後しますが、既に通販サイトでは予約が開始されています。

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