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じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ ~数多のキャラクターを使い分け異世界を自由に生きる~  作者: 藍敦
第十五章 そして彼女が辿る道

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第二百三十九話

(´・ω・`)メリークリスマス!

 ライズアーク大陸に到着してから、俺達は内陸部に向かわず、北上して北側の港町を目指していた。そしてさらに沿岸を進み、国境に広がる大森林のダンジョンをクリアし、そのまま国境沿いに進んでから、ようやく国の中心を目指し進路を変えた。


 随分と遠回りな旅路となってしまったが、お陰で禁域ダンジョンをクリアし、強力なダンジョンコアを二つも入手できたのだから、結果的にこの大きな寄り道は正解だったと言えるだろう。

 尤も、その最中に、俺は自分のキャラクターの一人に愛想を尽かされ、俺を捨てるという形でキャラクターの一人が去っていってしまったのだが。


「二人とも、見えてきたよ。この国の中心の一角『西都リーゼネーヴェン』だ」


 すっかり慣れた御者をこなし、この国の中心に向かっている馬車。

 俺は車内の二人に、大都市が見えてきたことを知らせる。

 遠目からでもその発展具合が見て取れるような、背の高い建物で埋め尽くされた外観。


 農業地帯を抜けた先に、まるで急に大都会が現れたような、そんなギャップに戸惑うほど。

 この大陸に来てから、玄関口であった海運都市以外、小さな村々しか見てこなかったので、余計にギャップを感じているのかもしれないな。


「わー! おっきい! リンドブルムよりおっきな街がまだあるなんて!」

「これは……ビルが多いですね、ここからでも見えるなんて……」


 馬車の窓から顔を出す二人も驚嘆の声を上げる。

 そう、この都市は遠目からでも、もうリンドブルムを遥かにしのぐ規模だと見て取れるのだ。

 さらに驚くべきことに……この国には同じ規模の都市がもう『四つ』もあるのだ。


 このコンソルド帝国は、帝都を囲むように、四つの都市が存在している。

 俺達はその一角、帝都の西に位置する都市にやって来たというわけだ。


 俺達はぐんぐんと近づく都市に飲み込まれるように、大量の馬車の流れに乗り、この大都会の中をあれよあれよと流されていく。


「シズマ、大丈夫ですか? どこか人の少ない通りを見つけて、そこに入ってください」

「わ、分かった!」


 都市の中でも、ある程度の速度で進む大量の馬車。そこからどうにか抜け出し、少しだけ落ち着いた通りに避難した俺は、そこでようやく馬車を止め、御者をシーレと交代した。


「いやはや、面目ない」

「仕方ありませんよ、ここまで人が多いなんて。この落ち着いた通りで、まずは宿屋を探しましょうか。ここまで広い都市なら、さすがに一カ所にだけ宿が集中しているなんてことはないでしょう」


 そうして、都市内での御者をシーレに任せ、俺は車内でメルトに、この都市について解説する。

 無論、シーレにも聞こえるように。


「この都市は服飾関係の産業が盛んらしいね。つまり服とかアクセサリー作りだね。他にも、活版印刷を始めとした印刷技術はここから広まったそうだよ」


「あれよね? 本を作ったり……事件をまとめた紙を作るのよね。なんだっけ」


「リンドブルムではあまり盛んじゃなかったからね、特定の人間に配るための技術だった。新聞やニュースペーパーって呼ばれるものだよ」


「古いパンフレットが私の家にあったから、たぶんかなり昔からある技術なのね?」


「その割には他国に広がるのが若干遅いような気もするけどね。いや……違うな。ダスターフィル大陸はある意味では閉鎖された国、半分搾取されるような立場だったから、か」


 貧弱な大地故に、食料以外の産業が広まる余地が少なく、さらに人口ダンジョンから生まれるダンジョンコアも、他国に輸出していた。

 文化的発展が遅れてしまう条件が揃ってしまっていたんだよな。

 なら、ここから広まっていくのかもしれない。


『どうやら、活版印刷だけではないみたいですよ。写真技術も盛んなようです。カラー写真なんてダスターフィルでは見たことなかったのに』


「え、本当?」

『ええ、今街中で、かなりポスターを見かけました。あれは写真ですね』

「マジか……一世紀近く文明の発達具合に差があるな……」


「写真って、あれよね? 絵じゃなくて、見えている光景をそのまま切り取る技術よね? 『記憶石』を人工的に再現した技術」


「記憶石って?」


「すっごく珍しい石の一つだよー。収納魔導具の『空間石』と時間停滞の『時空石』さらに、周囲の光景を記憶して、周囲に投影する『記録石』! 世界『五大魔石』の一つなんだー」


「へー! 先の二つは知ってたけど、そんなものまであるのか……」


「残り二つは『流転石』と『喪失石』だよ。でもこれは伝説上の物質とも言われてるから、普通は『三大魔石』って呼ばれてるんだってさ」


 なんだか久しぶりに、物凄くファンタジーな話を聞いたような気がする。

 記録石か……もしかしたら、それが使われることで、地球よりも早く新しい段階に文明が進むかもしれないな。


『宿屋を見つけましたよ。ここに行ってみましょう』


 シーレが宿屋を見つけてくれたようだ。

 俺達は早速、この西都の拠点とすべく、受付へと向かうのだった。




「え、ただの宿泊以外のプランもあるんですか?」


「ええ、もし必要ならそっちも紹介できるわ。長期滞在なら、何かと自分達で自由にやりたいこともあるでしょう? ただ部屋を借りるより割高になっちゃうけど、自炊も入浴も自分達で済ませられるし、総合的に見たら安く上がるかもしれないわよ」


 俺達の見つけた宿は、メインストリートからは離れているものの、かなり大きな宿で、今も数十人規模で利用者がいるそうだ。


 で、なんとこの宿、宿泊だけでなく、短期契約の空き家も貸し出してくれているそうだ。

 女将さんの言うように、確かに普通に一月契約で部屋を借りるよりも割高だが……確かにこっちの方が何かと便利だ。


「一度その空き家を見せてもらえますか?」

「構わないよ。ちょいとアンタ、店番代わっとくれ!」

「あいよ!」


 店の奥から現れた主人と交代した女将さんに連れられ、俺達は宿から少し離れた場所にある、住宅街の一角に向かう。


 多くのビルに囲まれた路地だが、そこを抜けると、まるでそこだけ文明の発達から取り残されたかのような、背の低い一軒家が立ち並ぶ区画が存在していた。


 どことなく落ち着くその様子を見て歩きながら、やがて一軒の家まで案内された。

 小さな庭には、井戸と背の低い木。花壇も手入れがされて雑草などは生えていないが、特別花などは植えられていなかった。

 本当に貸し出すためだけに、環境を維持しているかのようなこぢんまりとした一軒家だ。


「この家だね。契約は二カ月から、料金は六〇万リクスになるよ。これは建物の値段だから、宿泊する人間が増えても、連絡さえくれれば問題なし。ああ、でも一泊二泊くらいなら連絡はいらないよ。探索者なんだろう? 臨時のメンバーが増えることなんてよくある話だからね」


「なるほど……六〇万で二カ月……一泊一万か。一軒家でこれなら十分安いって言えるな」

「シズマ、私はこれで良いと思いますよ。集団生活でトラブルが起きるリスクも考えたら」

「私もお家の方がいいなー! 三人ならちょうどいい大きさの可愛いお家だよ?」


 どうやら、うちの女性陣は乗り気のようだ、なら、ここで決めてしまおうか。


「じゃあここで契約します。宿に戻って契約しましょう」

「毎度! 馬車の方は宿で預かっておくよ。そっちの料金はここの契約金に含ませてもらうよ」

「ありがとうございます」


「実はね、お客さん達の顔ぶれ、特に娘さん二人を見て『ああ、これは絶対トラブルを起こす馬鹿が出てきそうだ』って思っちゃったんだよねぇ。うち、探索者の利用客も多いからね、中にはガラの悪いやつもいるのさ。こんなに美人な二人がいたら、大変だと思ってね、お兄さん」


「あー……ははは……そうですね、実際そういう心配は付きまといますね」


 そうして宿に戻り、馬車を正式に預け、半魔獣も馬房で管理してもらうことに。

 さすがに半魔獣の餌代は別途支払いの義務が生じるということだったので、魔力回復薬を多めに渡すことで、その金額もなしにしてもらえた。


 料金と引き換えに空き家の鍵を受け取り、これで正式に俺達の西都での拠点が手に入った、というわけだ。


「なぁなぁ、俺達のパーティ組もうぜお二人さん。俺達白銀だぜ?」

「市中の奉仕任務の手伝いだってしてやるからどうだ? なぁ」


 ……一瞬目を離した隙にもう絡まれてるじゃないですかー! ヤダー!

 二人を連れ、俺達は足早に空き家に戻る。やっぱり目立つ功績と、いかつい外見って大切なんだなぁ。




「シズマー? 私って可愛いの? 美人なの? シーレだけじゃなくて?」


「メルトは可愛いですよ? 物凄く可愛いですし、もう美人のお姉さんになりかけていますよ。だから気をつけないといけないんです。分かりましたか?」


「そっかー……私、まだまだ子供のつもりだったんだけどなー」

「いやぁ……仕方ないよ。メルトは街に不慣れだったからね。少しずつ慣れるしかないよ」


 空き家にて、メルトの素朴な疑問に答える。彼女としては、時間だけが過ぎ、一人森の中で暮らし始めた時代からあまり意識が成長していない……のかもしれない。

 最近は周囲の同年代と一緒に過ごしたり、シーレと行動をするようになって自覚が芽生えつつあるようだが、今度は年齢ではなく、自分の容姿が優れていることに疑問を持ち始めたようだ。


「メルトは可愛いから、いろんな人にこれまで声をかけられただろう? 少しずつ自覚すればいいよ。ここはリンドブルムより人が多いからね、そういう機会が増えるかもしれない」


「うーん、分かった」


「私が一緒にいますから、ある程度安心してください、シズマ。最悪、相手を恫喝してでも引き下がらせますので」


 うちのお姉さんが怖いです。

 そんなちょっとした注意点を振り返りながら、まずはこの都市にあるというダンジョン、その説明を受けるため、この都市の探索者ギルドに向かうのだった。

 確か、街や村、都市の出入り口付近にあるんだったよな、ギルドは。




 馬車での移動は怖いので、徒歩にて都市の入り口を目指す。

 海運都市でも感じたことなのだが、この大陸は土地が広いのに、さらに建物を上に伸ばすことに注力しているように感じる。

 広大な土地なら、横に広げていけば良いと思うのだが……何か理由でもあるのだろうか?


「本当ねー! 色付きの写真があちこちにあるねー」

「広告をかねているんでしょうね。それに、どのモデルも素敵な衣装ですし」


「服かー……せっかく自分で買ったけど、そろそろ私も新しい服買わないとなー……コートもあっという間に着なくなっちゃったし、もったいないなー」


 メルトは冬に自分で買ったコートを思い出しているのか、寂しそうにそんなぼやきを口にする。

 うむ、あれはもこもこで非常にメルトによく似合っていた。可愛いの暴力でした。


 今も一緒に買っていた、やや厚手の服を着ているが、この大陸に移ってからさらに気候が夏に近づいたように思える。

 そうだな、せっかく服飾産業の盛んな都市なんだし、服を買っておくのもいいかもしれない。


「あった! 探索者ギルドみーっけ!」

「でっか! え、凄いな……このビル全部ギルドなのか」


 考え込んでいると、前を歩いていたメルトが、なんだかとても嬉しそうに声を上げた。

 その声に顔を向けて見れば、確かに、言われないと気がつかない、とてもじゃないがギルドとは思えない巨大なビルが聳え立っていた。


「ああ、先を越されてしまいましたか。まさかこんな大きな建物がギルドだったなんて」

「はは、なるほどシーレと競争してたのか」


 ビル内部は、かなり先進的なインフォメーションセンターが存在していた。

 分かりやすい案内板に、道順を示す、色分けされたライン。

 各階に直通のエレベーターも複数用意され、大量に飲み込まれてきた人間が皆、瞬く間に目的の階に案内され移動していく。

 先進的というよりは……もはや近代的、地球と比べても遜色がないレベルだ。


「私達が用があるのは『リーゼネーヴェンダンジョン案内窓口』ですね。ここで、この都市のダンジョンの説明や、必要な人間は都内の任務を受けられるみたいです」


「街の中にダンジョンって、なんだか凄く不思議よねー……」

「確かに、リンドブルムの人口ダンジョンすら、都市から少し離れていたからね」


 そう、ダンジョンが『都市の近く』ではなく『都市の一角』に存在しているのだ。

 どうやら帝都を含む残り四つの都市も同じらしく、探索者はその都市に長期滞在し、ダンジョンに挑んでいるそうだ。


 それにより経済の活性化、ダンジョンからの出土品、そして年に一人いるかいないかの踏破者がもたらす天然のダンジョンコアや、守護者が落とすドロップ品で、都市が潤っている、という訳だ。


「あ……そういえば『心穿つ久遠秋愁』で手に入れた、大きなオパールのオーブ。あれってここで売れないかな?」


「ふむ……資金が底をつきそうになるまで持っておいて良いのではないですか?」

「えー! あれ売っちゃうの? 綺麗だから私、たまに眺めてるのになー」

「んー……分かった、じゃあまだしばらくは持っておこうか」


 そうか、メルトはあれが気に入ったのか。まぁ眺めてる姿が可愛いので、暫く残しておきましょう。

 俺達は案内板とビル内に引かれたラインを頼りに、目的の窓口へ向かう。

 が、どうやらこういった窓口、部署ごとのフロアではまだまだ人が多く混雑していた。

 そりゃそうか、人を捌くのにも限度があるからな。


「ふむ……どうやら、この都市に来る探索者の殆どは、白銀以上のランクのようですね。それだけ難易度が高いということですか」


「ん? どうしてそう思ったんだい?」


「これを見てください。都市部周辺で起きている問題の依頼書です。大量に掲示板に貼られています。恐らく依頼遂行が探索の条件に含まれる赤銅ランクの人間は、あまりここに来ないのでしょう」


「わー……冒険者ギルドでもこんなにたくさん任務の紙が貼られてること、見たことないわ私」

「人口も多ければ問題も多い……か」

「あ、私達が契約した宿も任務出してる! ええと……」


 メルトが見つけた依頼書に目を通す。するとどうやら、あの宿屋は手広く商売をしているらしく、空き家の貸し出しや宿屋の経営だけでなく、さらに大きな酒場も経営しているようだった。

 で、その酒場の治安が最近悪く、その取締り兼、用心棒を募集していると……。


「明らかにメルトやシーレにはさせられない依頼だなぁ」

「えー? ……あの女将さん困ってるなら、なんとかしてあげたいんだけどなー」


「ふむ……どうせしばらく滞在することになるのですし、良い関係を築くためにも依頼を受けるのはアリではありませんか? それに……酒場なら、情報がたくさん集まるかもしれませんし」


 すると、何やら考え込んでいたシーレが、意味深に俺の目を見つめながら、そんな提案をした。

 ……情報、か。確かに、吟遊詩人の話もあるし、こういう場所での情報収集は必要かもな。

 俺達は、ダンジョンの説明を聞きに来たつもりだったが、急遽この都市の中での任務を一つ受けることにした。


 この依頼が……どこかでシズカに繋がっている、そうシーレは感じ取ったのだろう。

 ……それは、俺もだ。

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