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じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ ~数多のキャラクターを使い分け異世界を自由に生きる~  作者: 藍敦
第十五章 そして彼女が辿る道

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第二百三十八話

 翌朝。シレントの姿をこれ以上人目に晒し続けるのは得策ではないからと、朝の早いうちに村を発った。

 馬車の中で、本来の自分、シズマの姿に戻った俺は、この後はどうするべきか、御者席のシーレに向かい問う。


「内陸部に向かうなら、このまま国境沿いに進んで内へと向かう道を目指すこともできますが、距離的には、ここから引き返して、最初の海運都市、エルドラークから内陸に向かった方が近いんですよね……本当に広い大陸です、ここまでかなり長距離移動したつもりでしたが……」


 そのルートは、スティルが通っているルートだ。なら、俺達もそこを通るのは都合が悪いかもしれない。

 このまま国境沿いに進み、ぐるりと回って内陸を目指す道を提案する。

 すると――


「あれ? でもそれだと、作ってる途中の村、あそこに『もう森は心配ないよ』って教えられないよ? いいの?」


「ん、大丈夫だよ。もう誰が見ても森の脅威はないからね。それに、さっきの村からお手紙を出しておいたんだ。もうダンジョンの脅威は取り除いたから、石像のデザインは変更してくれって」


「そうだったのね! よかったねー、これでセリーンが有名にならなくて済むわね!」

「そうだなぁ、将来セリーンが外に出た時、聖女様だーって騒がれなくて済むね」


 本当は手紙ではなく、スティルを向かわせたのだが。

 シーレにはもう、スティルを外に出したと教えてある。このルートを選んだ理由も、手紙の話も、彼女には本当の意味が伝わっているだろう。


『では、このまま国境沿いに進みますね。地図によると、国境の門を通り過ぎた後にはいくつか村が点在していますし、そこを中継しつつ、内陸部へ向かう街道を目指しましょうか』


「了解。途中、もしも平坦な道があれば、俺にも御者のやり方を教えてよ。そろそろ覚えておいて損はないからさ」


『そうですか? ふふ、分かりました』


 シーレだけいつも外っていうのも悪いしな。それに……人通りが多い街道に出たら、シーレの容姿は目立ってしまうだろうから。

 容姿……か。なら、シズカは今頃どうしているんだろうな――






 エグゾーストの縮小に伴い、国境に面する森は全て平原に変わり、この道を通ることを選んだ俺達の旅は、必然的に代わり映えのしない、大草原を右手に眺め続ける旅となった。


「へぇ……この馬? 半魔獣? 賢いんだなぁ……俺の指示でもしっかり段階的に速度を上げてくれるし、左右の方向転換もかなりスムーズだ」


「そうでしょう? 恐らく馬力がかなりあるんだと思います。この馬車、かなり金属パーツをふんだんに使っているのに、楽々引いているんです。だから細かい動きですら容易に行えるくらい、力に余裕があるんだと思います」


「そういえば、こいつらって魔力回復薬を餌と一緒に与えないといけないんだっけ?」


「ええ、そうですよ。休憩中に付近の草や葉を食べ、そこに少し回復薬を与えるだけで、かなりの距離を走ってくれます。まぁ……本来、その回復薬が高額で、私達のように湯水のごとく使って長距離移動をする方が異常、なんですけどね」


「なるほど……エサ代があまりかからないと思ったけど、普通は逆に高上りなのか」

「セイムは本当に良い馬車を手配してくれましたね……今頃何をしているのでしょうか」

「何やってるんだろうなぁ……ピジョン商会の手伝いとかかね?」


 きっと、セイムのことだから、いろんな場所の手伝いを買って出ているのかもしれないな。

 ……なら、スティルはどうだろうか。正直、あいつの一人旅となると……あの戦争終結直後の動きを思い出し、若干不安になってしまう。


 多くの人間を、弄ぶような言動でかき回し、そして十三騎士のうち二人を絶望させ、メルトを意図的に……悲しませようとした。

 結局、それが自分の心に科せられた偽りを、自分で解放する決め手となってしまったようだが。

 ……なら、大丈夫かもな。


「シズマ。円卓の中で行われた会議の内容は、先日全て教えて頂きました。それにスティルの考えも。貴方はこの先……『セイオン』を自由に動ける人間として、遊撃に出すつもりですか?」


「いや、まずはシレントの代わりに、俺の切り札として運用していくつもりだよ。シレントにはできれば、どこかでダスターフィル大陸に戻ってもらうつもりなんだ。セイム同様、あそこで人との繋がりを持った以上……そこを守ってほしいと思うんだ。本人は最後まで俺と一緒についていくと言いそうだけどね」


 ファーストキャラとして、俺と最も長く一緒に過ごした存在として、俺に付き従うつもりなのは理解している。

 だが、いつかは自分の人生を歩んでもらいたい。なら、シレントにはシレントとして、自分の居場所をしっかりと、定めてもらいたいというのが俺の正直な気持ちだ。


 ストーリーにて、故郷を奪われ、居場所を奪われ、戦いの道を歩むしかなかった存在だから。

 だから、そういう帰るべき場所を、与えてやりたいと願ってしまうのだ。他ならぬ、最も俺と共にいた半身だからこそ。


「……私達は、良き主に恵まれましたね。スティルは……シズカを見つけたらどうするつもりなんでしょうかね……」


「悪い結果にはならないと、俺は信じてるよ。ただ……もし、シズカの恨みが、想像以上だったとしたら。恨みが憎しみに変わり、俺達への憎悪として向かってきたとしたら……その時は……」


「敵対したなら、排除しますか?」

「分からない。でも、たぶん、何らかの決断を下すと思うよ」


 俺だけならそれでいい。だがもしも、俺を苦しめるために、俺以外の誰かにまで害意が向かうのなら。その時は……。


『ねーねー! 一人だと暇よー! シズマー、馬車を動かせるようになったなら、シーレのことこっちにちょうだいー』


 すると、馬車の中から、メルトが退屈を持て余す声が聞こえてきたので、一度御者の勉強を終え、馬車を止めてシーレに中へ戻ってもらうことに。

 そうだな、丁度良い。少し一人で、色々と今後のことを考えないといけないからな……。








 その頃、一人行動を開始したスティルは、無事に建造中の村にシズマからの伝言を伝え終え、港町の石像が撤去されるのを見送ってから、海運都市へと向かう乗合馬車に乗り込んでいた。


「では、これから長旅になると思いますが、よろしくお願いいたします」


 同乗者に柔和な笑みで挨拶をし、スティルは馬車に揺られて進んで行く。

 その際、他の乗客から情報を仕入れるのを忘れない。

 持ち前の『宗教関係者』を思わせる、一定の信頼を容易に勝ち取れる風体を利用しながら。


「なるほど、では海運都市からの船が減少傾向にあると」


「そうなんですよ、本当は我々も、海運都市に向かうなら船の定期便で向かうのが一番早いと思っているのですが、どうにも海運都市が今、港が満足に使えない状態らしく……」


「おやおや、何か大きな事故でもあったのですかねぇ……心配ですね」


 スティルとしても、本当は海路を使い、手早く内陸部に向かうつもりであった。

 だが定期便が無期限欠航らしく、こうして陸路を選んだという訳だ。

 そして同時に考える。何故、船が出ないのかと。


(港の事故や破壊ならば、いくらでも他の場所を臨時の港として利用可能なはず。つまり場所的な問題ではなく、船そのものにトラブルが起こったと見るべきか。あるいは……乗組員になにかあったのか)


 そう考えながら、常に頭の片隅には『ある疑い』が残されていた。

『シズカの関与』だ。たとえどんな些細な事件でも、多少の疑いを持つように、スティルが心がけていた。

 それだけ、警戒しているのだ。彼女の力を、行動の原動力を。


(時に、憎しみや恨みは何よりも強い原動力となりますからねぇ)


 そうして馬車に揺られ、スティルは海運都市、そして内陸部を目指し、長い旅路を進み始めたのだった。








「この村のお野菜、美味しいねー!」


「そうですね、そろそろ初夏に入る季節ですが、こちらの大陸はもう、お野菜が沢山収穫され始めているんですね」


 内陸を目指し馬車で旅を始めてから、今日で七日。

 国境に面した長い草原を越え、ついに国の中央に向けて進路を変え始め、最初に立ち寄った村で、メルトは村の宿屋で出された料理に舌鼓を打ち、感激したような声を上げ、トマトやキュウリを使った、マリネ風のサラダをパクパクと食べていた。


 揚げ物だけでなく、こういうさっぱりとしたサラダも好むとは、実に良い子ですな。

 だが実際、この近辺は農業地帯のようだが、穫れている野菜の品質がどれもこれも高いように思えるのだ。


 トマトは、俺が知る日本のトマトよりも肉質が硬く、水分よりも身が詰まっているような印象を受けるが、味そのものは非常に濃く、その食感はまるで少し柔らかいリンゴのようだ。

 非常に、美味しい。


「しかし本当に美味しいですね、やはり大地を巡る力、恵みの強さが違うのでしょうね。それと……純粋に品種も改良されているんだと思います」


「やっぱりそうか……。工業的な発達具合といい、やっぱり過去に召喚された勇者から、そういう技術的指導を受けているのかもしれないね」


 宿屋での夕食を食べていると、食堂に吟遊詩人だろうか、何やらギターにも似た楽器を首から下げた男性が現れ、皆の視線を集めやすい場所に椅子を置き座りだした。


 本物の吟遊詩人なんて初めて見るな。どんなものなのかと、三人で静かに見守る。

 ……ハッシュがいたら、飛び入りでセッションなんてし始めるかもしれないな。


 すると、詩人は楽器を静かに鳴らしながら、どこかで起きた事件を、まるで物語のように詩的に語り始めた。


『人々を導く女神を捕らえるは、自由を拒む圧政者。されど女神の歌声は、頑なな心を解きほぐし、混迷と狂乱を癒し、手を取り合わせる。女神の唄を、自由への讃美歌を、私は託される』


 誰かの活躍を歌ったのだろうか。どこかで、人と支配者の間でトラブルが発生したのだろう。

 けれどもそれをとりなした、女神と呼ばれる人間がいた……と。


 どこか懐かしさを覚えるメロディと共に語られたそれは、酒の肴としては上等だったのか、食堂から疎ら以上の拍手を向けられていた。


「うーん……よくわからなかった! 誰かのお話なの?」

「……ええ、恐らくそうでしょう」

「シーレ……?」


 聞き終えたシーレが、少々難しそうな表情を浮かべていた。

 今の唄を、どうやら考察している様子だが……。


「……シズマ、今のメロディ……ゲームのタイトル画面に使われているワンフレーズでした」

「……! じゃあ今の話……!」

「ええ……恐らくは……」

「もう、動き始めているってことなのか……」


 既に、人心を掌握しつつあるのか……?

 シズカ、お前は何を求めて動いているんだ……?




 夕食を終え、宿の一室で先程の唄について説明をする。

 シズカが関わっているであろうこと、そしてその唄が、もうこんな場所にまで伝わっている事実。

 俺達の元を去ってから、シズカは恐らく、最速で人の多い場所に移動したのだろう。

 具体的に何をしたのかは分からないが、今後はこういった、詩人の情報や、人々の噂話にも耳を傾けた方がよさそうだ。


「……シズカって、シズマのこと嫌いなの……?」

「うん、たぶんね。俺が……シズカのことをずっと独りぼっちにしてきたからだと思う」


「なら……仲直り、できるといいね。シズカ、きっと寂しいんだと思うわ。だからきっと、自分を有名にして、シズマに知ってもらいたいんじゃないかなぁ?」


「そう、だといいのですが……」


 もし、メルトが言う通りだったら、どんなによかっただろうか。

 でも俺には、このメロディと唄が、遠回しな『俺への宣戦布告』のように思えてならないのだ。

 ……もうすぐ内陸部。首都を取り巻く、ダンジョンを抱えた巨大都市が幾つも密集する土地だ。


 俺達はこの先、その大都会で、どんな出会いをして、そしてどんな危険と遭遇するのだろうか。

 不安渦巻く中、俺達は都市部に続く最後の村で、一夜を明かすのだった。

(´・ω・`)現在、この作品『じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ』の書籍版第一巻が発売中です。

(´・ω・`)このクリスマスシーズン、自分へのプレゼントとして買ってみるのはどうでしょうか!(必死


(´・ω・`)また私事なのですが、この章が終わったらまた、更新頻度を落とすか、更新を休止させていただこうかなと思っております。

(´・ω・`)実は体調不良が重なり、年明けに検査入院を必要とするちょっと面倒な検査があり、あまり長時間の執筆ができなくなってしまいました。


(´・ω・`)申し訳ないでやんす

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