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じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ ~数多のキャラクターを使い分け異世界を自由に生きる~  作者: 藍敦
第十五章 そして彼女が辿る道

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第二百二十九話

「聞き込みの結果を共有しましょう。二人とも、お話は聞けましたか?」


 港町『ルビージャム』にて、新興宗教について三人で情報を集めることになった。

 さすがに、今の俺の姿であるセリーンが信仰対象となっているのなら、それを止めさせなければいけない。

 直接的な問題は今はまだないが、未来で必ず、それこそセリーンを自由の身として外に出した時、彼女の人生を妨害する可能性すらあるのだから。


「とりあえず俺は別な姿になるべきか、それともこの姿で変装するべきか、どうしようか」

「眼鏡と髪型、似合ってるよー?」


 あの石像、かなりこちらの容姿に似ていたため、咄嗟に髪をポニーテールにして眼鏡を装備、服の上からローブを羽織るという、簡易的な変装をしていたのだが、意外とバレることはなかった。

 だが念のためにシズマである俺の本来の姿に戻ろうと思っているのだが――


「いえ、恐らくこの宗教の教祖は、セリーンとして救った人間の誰かのはずです。その人物を説得するためにも、その姿でいる必要があります」


「そうかぁ……で、二人は何か情報、集まった?」


「集まったよー! 宗教のきっかけ? なんかね、この先の国境に向かう街道で、昔からとっても強くて恐ろしい魔物が出ていたんだって! 誰も倒せない、神出鬼没の魔物で、それを『槍の聖女』が倒したんだって! それ以来、その魔物の目撃情報も被害も、ぱったりなくなったって聞いたわ」


「私も同じようなお話を聞きましたよ。長年、倒すことが困難で捜索も難しかった魔物。国も討伐命令を撤回した魔物を、その聖女が倒したそうです。ですが、その聖女は人々に癒しの力で傷を癒し、それを見届けたところで、まるで役目を終えたかのように突然消えたそうです。その聖女への感謝、そして偉大な功績を人々に知らせるために起こされた宗教だそうです」


「心当たりあるんだよなぁそれ……そうか……突然消えたから、そういう神秘性が強まっちゃったのか……どうにかして『自分は聖女でもなんでもない』『持っていた魔導具が発動して転移しただけ』って伝えないと……その宗教の総本山というか、本拠地ってどこかにないのかい?」


 確かに、あの時俺が倒した『境界破り』と呼ばれていた魔物。

 あれは……ダンジョンの奥深く、それこそボスクラスの強力な魔物だった。

 先日の骨のドラゴンや、かつて『リンドブルムの巣窟』の地下で倒したドラゴン、アレに匹敵する相手だった。


「本拠地なのかどうかは分かりませんが、一月程前、この先の街道に新たな村を作る計画が上がったそうです。これまでは魔物の被害を恐れ、中継地点になるような村を極力作らないようにしていたそうですが、最近はその宗教の勢いや、実際に『境界破り』と呼ばれる魔物が現れなくなったことで、国からも新たに交易や旅の中継地点になる場所が欲しいと求められていたとか」


「ふーむ……じゃあその村を作ってるって場所、行ってみようか? どうやら俺が求めていた情報、お世話になった人達は無事だって分かったし」


「そうですね、恐らくなんらかの関係があるはずです。一応、引き続きセリーンの姿で変装をして向かいましょうか」


「じゃあ、今日でここを出発するのね? エビの料理、食べないと!」

「もうすぐ運ばれてきますよ、楽しみですね」


 そう、俺達は港町のカフェで報告をし合っていた。

 どうやら行商人さんが言っていた『エビパテトースト』はこの街の名物らしく、大抵の飲食店で出してくれるという話だったのだ。


 それから程なくして、とても美味しそうな、ラスクにも似たカリカリに焼かれた輪切りのバゲットが運ばれてきた。

 表面にはエビのすり身のようなものが塗られており、香ばしそうな焼き目がついている。

 これは美味しそうだ……エビの香ばしい、甘いような香りと、パンの焼ける香ばしい香りに、胃がキュウキュウと泣き出すような感覚がする。


「お洒落さんな料理ね? おいしそー!」

「なるほど……揚げてないエビパンという感じですね? これはワインが進みそうです……」

「まだお昼だからダメだけどね? いくつか追加で注文して、アイテムボックスに保管しておこう」

「そうします。すみませーん、店員さん、同じものをもう二皿お願いします」


 即断即決である。

 しかし改めて思うのだが、まさかメルトがこんなにもエビを気に入るとは思っていなかった。

 こう……お約束ではあるが、油揚げというか、お稲荷さんのように揚げ物に食いつくと思っていたのだが、結局『エビのから揚げ』を気に入ったのだって、食材がエビだったからだ。

 ……家のエビ養殖池、今頃どうなっているのだろうか?

 セイムはしっかり管理してくれているのだろうか?

 幸せそうにエビパテトーストを頬張る彼女を眺めながら、そんな他愛もないことを考えていたのだった。






「ハッシュー、次はこっちの笛で音楽演奏してー!」

「なんだかハッシュに悪い気がするなぁ」


 港町を出発し、件の村建築予定地へと向かう最中。

 カーオーディオ扱いのようで若干申し訳なく思うも、オーダー召喚したハッシュを同席させ、馬車内で演奏をお願いしていた。


「シーレ、煩くないかい?」

『大丈夫ですよー。外の景色を楽しみながら一流の演奏を聴ける、とても贅沢な気分ですよ』

「わー、綺麗な音ねー! その笛、なんだかカッコいいわねー」


 フルートを演奏するハッシュを眺めつつ、馬車の外に目を向ける。

 右手側には、もうずっと森が続いているのだが、恐らくこの森も天然のダンジョン、禁域ダンジョンと呼ばれている『エグゾースト』のはずだ。

 この森に潜む魔物が、例の『境界破り』だったのだろうな。

 あんな強力な魔物が平然と街道近くまでやってくるダンジョン……『禁域』と呼ばれているだけはあるな。


「……このダンジョンをクリアしたら、強力なダンジョンコアが手に入るのかな」


 ふと、考えた。あの森の中のダンジョン『心穿つ久遠秋愁』で手に入れたコアは、大きさこそ立派だったが、力の弱いコアでしかなかった。

 故に、オーダー召喚が追加で可能になったのは、まだあまり成長していないキャラクターのみだった。

 ならば、この禁域ダンジョンなら、強力なコアを手に入れ、育ったキャラクターを新たに召喚できるようになるのではないか?


「……そしたら誰を外に出すべきかな……」


 ハッシュの音楽を聴きながら、頭の中に浮かび上がる選択肢について考える。

 なんだか、今まさに演奏中の彼が、その選択肢に上がらないのが申し訳ない気もするのだが。

 すまんハッシュ。残念ながら、自由を与えるとしたら、お前の優先度は少し低いのだよ……。


 捕らぬ狸の皮算用もいいところだな。

 この禁域ダンジョン、帝国に守られているようだし、簡単にクリアなんてできそうにないか。

 ……いや? 確かフーレリカがここに潜り込んでいたな。それに、始末しようとして放たれた追手もここにいたはず。

 もしかして、難易度や圧倒的な規模に慢心して、帝国は厳重にこのダンジョンを管理していないのかもしれないな。


「ならクリアできるかもしれないな……」


 凶悪なダンジョンだという森を眺めながら、馬車に揺られる。

 揺られるっていう程は揺れはしない、高性能な馬車ではあるけれど。


「なんにせよ、ご神体にされるのだけは勘弁だよなぁ」


 宗教を止めろとまでは言わないから、最悪あの石像だけはやめて欲しいと頼まないとな――






 馬車がそれからもう二時間ほど走ると、御者席のシーレから声をかけられた。

 どうやら少し先の方で、村という規模ではないが、何やら集落のような、小さな家をいくつも建てている場所が見えてきたそうだ。


 窓から顔を出せば、まだ夕方とよぶには少し早い、日が少し傾いた午後。

 どうやら、家を建てている大工職人の皆さんも休憩中なのか、その集落の近くの草原に腰かけ、休憩をしている様子が窺える。


 早速馬車を減速させ、既に完成しているであろう、村の入り口を思わせる門をくぐる。


『旅の方ですか? ここに立ち寄るとは、何かお困りでしょうか?』

『いえ、困っているという訳でなく、先程発った港町で興味深いお話を聞いたもので。どうにも、新しい宗教が新たに生まれ、どうやらこの村もそれに関係しているとお聞きしまして、是非一度詳しいお話を聞いてみたいと思った次第でして』


 馬車の外から、村の人間と思われる男性とシーレの話声が聞こえてくる。

 半分カマをかけるつもりなのか、この村が宗教に関係していると教えられた風に彼女は語るが、それに対して村の人間が何か言う様子はなかった。


『なるほど、旅人なら興味を持たれるかもしれませんね。ええ、教祖様ならこの村の建設の陣頭指揮を執っておられますよ。今は休憩中ですので、丁度いいかもしれませんね。今、馬車を停められる場所に案内しますから』


 上手く話が運んだようだ。

 そうか……教祖が直々に村の建築の先頭に立って現場にいるなんて、少し意外だな。


 勝手なイメージだが、こういう宗教の教祖って、どこか教団の施設の奥で何もせずに、こう……なんというか、富を得ていたり、欲に溺れているようなイメージを勝手に抱いてしまっていた。

 少しフィクションの悪徳宗教のイメージに引っ張られ過ぎてしまっただろうか。


 馬車が停まるのと同時に、ハッシュを一度帰還させる。

 メルトと二人馬車を降り、俺はローブのフードを深く被り、念のため姿を隠す。

 見たところ、この建築中の村は普通の村らしく、変に宗教色の強い、排他的だったり秘密主義だったりするような閉鎖的な作りではなかった。


 大きな門の上にはアーチ状看板が掲げられ、そこには『ようこそ聖槍の村』と書かれている。

 村の土地を囲む柵も、背が高かったり威圧的な壁ではなく、野生動物が入ってこない程度の、普通の村の柵という印象しか受けない。


 本当に、平和な村、今まさに入居者を募集しているような、新しい希望に満ち溢れた村にしか見えないのだ。


「あちらの礼拝堂で教祖様がお祈り中です。来客が来たら通しても良いとおっしゃっていたので、遠慮せずにどうぞ」


「はい、それでは失礼して――」


 村の中、真っ先に完成したであろう、少しだけ大きな建物の扉をシーレがノックする。

 すると内部から男性の声で『どうぞ入ってくれ』と、予想以上にフランクな口調が返ってきた。


「失礼します」

「失礼しまーす!」

「失礼しま……す」


 その礼拝堂の中、案の定祀られている石像。

 今の俺にそっくりなセリーン像を前に祈りを捧げていた男が、こちらを振り向いた。

 その人物の正体は――


「あー! おじさん! 確かベルンさんだっけ? 元冒険者の! 貴方が教祖なんですか!?」


 それは、あの乗合馬車に乗り合わせ、共に魔物に立ち向かった冒険者のおじさんだった。

 マジか……! 冒険者を止めたとは聞いていたけど、教祖になっていたなんて……!


「ん? なんだいお嬢さん、俺を知ってるのかい?」


 俺は眼鏡とフードを外し、このローブも一緒に脱ぎ、変装を解く。


「私ですよ! いや、どうしてこんなことになってるんですか!?」


 口調を当時のように女性らしくしながら、彼にこれはどういうことかと尋ねる。

 だが――


「せ……せ……聖女様!!!!! 戻ってきてくださったのですか、聖女様ーー!」

「ギャー!」


 突然、顔中を涙と鼻水で濡らしながら、こちらにすがるように駆け寄ってきたのだ。

 やめろー! 中年のおっさんに縋り付かれたくはない!


「止まってください、教祖さん」

「グフ……なにを……」

「女の子に突然襲い掛かるとダメなのよ? セリーンが嫌がってるでしょー?」

「うぐ……す、すまん。いや、でも聖女様! 戻ってきてくださったのですか!」


 シーレとメルトに取り押さえられ、床に押さえつけられるベルンさん。

 いやいやいや……なんで宗教なんて開いちゃってるんですか貴方……。

 これは、色々と説明しないといけないし、説明をしてもらう必要もあるみたいですな……。

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