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第二百話

v(´・ω・`)v二百話到達!

 サンルームに移動し、この家の鍵を所定の位置にかざし、隠された機能を使う。

 家の周囲に人の反応がないのを確認し、次に自分のメニュー画面の項目を操作する。


「……む、オーダー召喚の最大人数が一人のままだ」


 ダンジョンコアを入手したのに、人数が増えない?

 俺は現在『夢丘の大森林』と『大地蝕む死海』のダンジョンコアを所持している。

 それなのに、オーダー召喚の人数が増えないとは……まさか、コアの数で増えていくという予想がはずれだったのか?


「……いや、可能性はまだあるな」


 俺は、夢丘の大森林のコアそのものは、大地に還元せずに所持している。

 既に大地に還元したのは『焦土の渓谷』のコアだけだ。

 もし『オーダー召喚可能な人数は大地に還元したコアの数』だとしたら?


 それなら、説明が付く。

『夢丘の大森林』のコアは今後も使うつもりはない。あの森を操作し、メルトの故郷や家を封鎖、他人の手が入らないように守っていきたいからな。

 なら、代わりにこの『大地蝕む死海』のコアをここで使えば――召喚人数が増えるのでは?


 持っていても効果がない以上、検証も兼ねてここで使ってしまおう。

 俺はダンジョンコアを取り出し、窓にかざす。


『管理者情報【クオンタムゲイザー】上級権限所有者フェルシューラーを認証』

『管轄管理項目を選択してください』

『自陣強化』

『拠点強化』

『拠点移動』

『拠点転移』

『拠点管理』

『仮拠点建造』

『眷属管理』


 項目の表示が、以前とは少し変化していた。

 恐らくダンジョンコアの元の持ち主が、これまでのダンジョンマスターよりも上位の存在だったのだろう。


『クオンタムゲイザー』は、確かフェルシューラーが名乗っていた名前。

 上位の存在が住まう世界にある、なんらかの組織名かなにかだと俺は予想している。

 きっと、これまでのダンジョンマスターは正式なメンバーではなかった、ということだろうな。


「コアを使うには……『自陣強化』だったかな」


 その項目を選ぶと、すぐに使用した場合どのような変化が起こるのかが表示された。


『自陣強化には権限を破棄する必要があります』

『操作者フェルシューラーの権限を返却し自陣の強化を行いますか?』

『地図上に表示されている陣地の海流の正常化および海底整地により防衛能力が低下します』

『また海流の安定化により海洋生物の流入量が増加し魔物の流入の可能性も発生します』

『水質の変化により生息域を奪われた一部生命の再繁殖が行われる可能性があります』

『地図上の情報を確認の上同意する場合は権限を返却してください』


 ふむ……そうか、渦潮や海流の安定化で、生き物が多く入ってくるようになるのか。

 漁獲量は増えそうだけど、同時に海の魔物が迷い込んでくる可能性も出てくるってことか。

 ……海の魔物って実質『大きなエビやイカ』だし、ある意味海産物なのでは?


「これを使ったら、その事実を国に報告した方がいいな。こんなことならさっきの面会で女王陛下に『使うつもりだ』って言っておくんだった」


 項目を操作し、ダンジョンコアを大地に返還する。

 これで、ダンジョンの消滅により海底の地形変化は止まったものの、それでも既に変化してしまっていた部分が元に戻るだろう。


「あとは自分のメニュー画面で確認できるな。じゃあハウジングメニューを開いて……」


 サンルームの窓に表示されていた項目を全て閉じ、今度は自分のメニュー画面を操作していく。

 この画面は俺にしか見えないからな、誰かに盗み見られる心配がなくて一安心だ。

 まぁ……これからやることを見られるのは問題なのだが。


「……よし! 召喚可能人数が二人に増えてる!」


『オーダー可能キャラクター0/2』

『シレント』 【門番】【採取】

『レント』  【門番】【採取】【観測】

『シーレ』  【門番】【採取】【研究】

『セイラ』  【門番】【採取】【料理】

『シジマ』  【門番】【採取】【鍛冶】

『セリーン』 【門番】【採取】【調合】

『ハッシュ』 【門番】【採取】【作曲】【演奏】

『ルーエ』  【門番】【採取】

『スティル』 【門番】【採取】


 以前よりも表示されているキャラクターの名前が増えている。

 やはり、実際にこの世界である程度動かしたキャラクターしか呼び出せないようだ。

 俺は実験的に『セイム』と『シーレ』を呼び出した。


 無言でサンルームに現れる、セイムとシーレの二人。

 ……美男美女だなこいつら!


「よし、とりあえずオーダー召喚の上限を増やす条件はこれで確定だな。現状、この場所と夢丘の大森林の端末でしか出来ないけど」


 いや、もしかしたらクリアしたダンジョンで使用可能なのかもしれないな。

 たとえば、焦土の渓谷はもうダンジョンが消滅し、今は普通に渓谷が存在するだけで、ダンジョン化なんてしていない。


 そのどこかに、コアを使える端末があるのかもしれない。無論、コア所有者にしか見えない形で。

 ……ならヤシャ島のダンジョンは海の中だったし、もうダンジョンコアを使うための場所には辿り着けないかもな。案外砂浜にあったりするかもだけど。


「あとは……召喚した相手の精神を表面に持ってくる方法か」


 俺は、キャラクター達に精神世界の中で教えてもらった、メルトが密かに作ろうとしている薬について、直接訪ねてみることにした。


「メルト―? ちょっとこっちに来られるかーい?」

『はーい』


 リビングにいたメルトがこちらの部屋に入ってくると、サンルームに佇むセイムとシーレの姿に驚き、固まってしまっていた。

 ……メルトって驚くと尻尾がブワって毛が広がって、ピンっと立つんだよな、分かりやすい。


「三人になってる! シズマとセイムとシーレだ!」

「そ、同時に二人まで呼び出せるようになったんだ」

「わー! なんだか不思議な気分ね!」


 指示を出していないので動かない二人に、メルトがちょっかいをかける。

 セイムの脇腹をつついたり、シーレの手を握ったり。


「メルト、今、みんなの心に関する薬を調合するために素材を集めているんだね? 前にイズベルで手に入れた『心臓銀』もそれに必要なんだね? ヤシャ島で聞いた素材も」


「あ……うん。どうなるか分からないから、期待させないために黙っていたんだけど……どうして分かったのかしら?」


「俺の心の中にいた薬に詳しい人がね、メルトが見せてくれた本の内容を見て気が付いたんだ。もしかしたら、心に関する薬を作ろうとしているのかもしれないって」


「そっか、バレちゃった。そうだ! シズマ、おばあちゃんの研究室から持って帰ったっていう、不思議なお酒、それ、私に調べさせてくれるかしら」


「あ、そうだったね。家なら落ち着けるし、調べてみて欲しい」

「ちゃんとした調合用のお部屋を用意して本格的に調べるね。これ……すっごく難しい作業なの」


 俺は、あの不思議な瓶を取り出す。厳重に鎖で封のされた壺を。

 もしかしたら、これは『ダンジョン化した夢丘の大森林内で何らかの方法でダンジョンを司る存在がいる世界にアクセスして手に入れた何か』をも使った品なのかもしれない。

 完全な俺の予想でしかないが。


「これね……シズマ、二階の空き部屋を一つ、作業用にしてもいいかしら? 清潔な布とか空間遮断の紋章で作業部屋にするつもりなんだけど」


「構わないよ。掃除とかも必要だと思うから、掃除道具をしまってある場所、分かる?」


「二階にあるの知ってるよー。じゃあ私準備してくるね! 錬金術と調合の同時進行だから、暫く部屋に籠りがちになるけど……大丈夫? 寂しくなぁい?」


「んー? 寂しいからご飯の時間はちゃんと部屋から出てきて、一緒に食べようね?」

「ふふふ、分かった! じゃあ、行ってくるね!」


 そうして、彼女は笑いながら二階へ向かって行った。

 さて……メルトは次の目標のために動き出しているのだし、俺も次の動きを決めないとだな。


「この国の変化とか、人工ダンジョンの様子も気になるけど……もうこの大陸に天然のダンジョンは存在しないからな。フースの一味も、一緒に逃げたビッチも、もうこの大陸に戻ってくることはそうそうないだろうし……いや、可能性はあるか」


 あいつら、優秀な素体を求めていたからな。

 イサカは死んだが、ムラキは治療を受けているし、カズヌマも囚われの身とはいえ生きている。

 ヒシダさんも生きている以上『異世界から召喚された優秀な素体』は三人もいるのだ、この国は。

 まぁそこまで執着するとも思えないが、それでも警戒はしておこう。


「……そろそろ、次の大陸で活動し始めても良い頃合いかもしれないな」


 未攻略のダンジョンも、どうやらライズアーク大陸には沢山あるようだし、純粋にまだ見ぬ土地を旅したいという気持ちもある。

 だがそうなると、この家からもしばらく離れないといけなくなるし、メルトもしばらくお別れになる友達が沢山いるだろう。


 無論、それはセイムとしての俺にも言えることだ。一度、セイムとして各方面に挨拶に向かう必要があるだろうな。


「……お前の意思が表面に出て来てくれたら良いんだけどな」


 俺は、召喚したまま待機させていたセイムに向かい、そう声をかける。


「……シーレは、俺の心の中にずっといたいのかな、やっぱり」


 もう一人、待機中のシーレを見つめながら、かつて俺の中で彼女と交わした会話を思い出す。

『シズマの中に溶け込めなかった』『他の皆と一緒になれなかった』そう、シーレは言っていた。

 自分が本質的には他人だから、俺の心の中で他の面々と深く関われなかった、と。


 今はもう、心の中に円卓が生まれたお陰で交流も持てているし、完全に俺に溶け込んでいる。

 だから……今の段階で彼女を外の世界に、心を表面に持ってくる方法で外に解き放つのは、彼女の意思を無視した、俺のエゴになってしまうのではないだろうか。


「……まだ、メルトの作業が終わったわけでも、薬が完成した訳でも、それで意思が宿ると決まったわけでもないけど、一度みんなと相談した方が……いいかもしれないな」


 待機中の二人の召喚を終え、再び俺の中に戻ってもらう。

 もし……誰か二人をこの世界に顕現させ、意思を持って生活させるようになるのならば。

 せめてセイムは、この街に残ってもらいたい、かな。

 もう、完全にセイムという存在はこの国にいなくてはならない存在であり、多くの絆を紡いできたのだから。


「まぁいろいろやらかしたのは俺なんだし、それをセイムに全部押し付けるのは申し訳ない気もするんだけど、さ」


 俺は、この広い談話室を見渡しながら、つい夢想してしまう。

 サンルームのピアノをハッシュが弾く。ソファにメルトとシーレ、レントが座りそれを聞く。


 それを微笑ましそうに見つめるルーエとセイムに、どこか居心地悪そうにしながらも、椅子に座り酒を飲むシレントとシジマ。


 そんな二人と一緒に、酒ではなく紅茶で付き合うスティルと、食事を運ぶセイラと、二日酔い対策の薬を持ってきてくれるセリーン。


 まだ、表に出していないキャラクターはいるけれど。

 それでも、皆がここに集い、俺とメルトの仲間として、家族として過ごす。そんな未来の光景。

 ……そう、未来だ。これは決して夢想、ありえない光景などではないのだ。


「……俺の最終目標が決まった。『本物の旅団』を現実に再現することだ」


 改めて口に出す。それが、俺の新しい目標だ。

 今日は心の中で皆と相談して、これからの方針を一緒に決めないと、な。

(´・ω・`)あ、じつはカクヨムでまた新しいコンテスト用の新作投稿開始したんですよ


(´・ω・`)現代ファンタジーのダンジョンものです。

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