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じゃあ俺だけネトゲのキャラ使うわ【書籍化決定】  作者: 藍敦
第一章 始まりの悪意と無知との遭遇
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第二話

(´・ω・`)45話分くらい書き溜めてるので毎日更新の予定です


(´・ω・`)カクヨムの方でも同じペースで投稿予定です

https://kakuyomu.jp/works/16818093093558400360

「女子は端の方で固まれ! イサカは固まった女子の前を頼む! シゲルは俺と一緒にあの狼の化け物倒すぞ!」

「了解。じゃあ僕が守るからね、みんなは周囲を注意していてね」

「分かったイサカ君! でも私、魔法使えるから手伝えることあったら言ってね!」

「コウヘイ! もう一匹いるぞ!」




 おー、早速戦ってる。しかも見た感じ初戦って訳じゃなさそうだ。

 なるほど、もう何回か出会って撃退してきたんだ。

 森に入って、獣道のような場所を選んで進んでいると、少し先の開けた場所でクラスメイト……いや、元クラスメイトが戦っていた。

 あの腐れビッチは魔法を覚えているみたいだし、シゲルは何やら豪華なこん棒、クラブっていうのか? それを振り回しているし、コウヘイはちょっと粗末というか、簡単な見た目の剣を振るっている。

 そしてイサカは、少し余裕でもあるような様子で、非戦闘員と思われる女子グループを守っていた。


「二人とも、僕が手伝うよ。ムラキ君僕と交代。終わらせる」

「チッ、ああ任せる!」


 すると、今度はイサカが魔物の前に躍り出て、素手で攻撃をいなし、投げ飛ばしていた。

 む、強いなイサカ。どんな願いをしたんだ?

 そして、カズヌマが投げ飛ばされた狼の魔物に剣を突き刺し、止めを刺していた。


「ふぅ……結構やれるね。これならこの森を抜けられるんじゃない?」

「ああ……けどイサカの願いには驚かされたな……『最強にして』だなんて」

「シンプルな答えだよ。これならきっと負けない」

「シゲルも『最強の武器をくれ』のお陰で、当たりさえすれば魔物がふきとんでくれるじゃないか。俺の『身体を丈夫にして』よりもずっと役に立つよ」


 なるほど、最強にして、か。……それって『どこで最強』なのか指定しなかったのかな。

 あの悪魔、絶対に言葉の裏を読んで変な制限をつけていると思うんだけど。

 例えばそう――『今この場において最強』とか。だって最強って周囲と比較しないと分からないし、それだって変動するものだし。だとしたら、本当にあの屋敷の中で最強だったんじゃ? いや、それもないか。そうしたらあの悪魔より強くなっちゃう。そんなリスクあの悪魔が侵すとは思えないから……。


「俺達の中で最強にした、か」


 もし、俺より後にその願いをしていたら、今の俺の状態よりも強くなっていただろうに。勿体ない。みんなで抜け駆けしたからこうなったんだぞ。


「それにしても……シズマはまだ諦めないのか……」

「うん、私が話した時は『ギリギリまで日本に戻る願い事を考えるから、先に行って』って言っていたよ」

「まぁアイツ、頭は回るみたいだからな。そのうち何か良い願い事を考えて追いついて来るんじゃないか?」

「ふむ……まぁ、最悪あの屋敷で平和に暮らす願い事とか考えているんじゃないかな。そこまで外に出たくないなら、そっちにシフトチェンジしてもおかしくない」


 ……あの女、どういうつもりだ。アイツが嘘を広めたのか? 自分はちゃっかり魔法を使えるようにしておいて……それに皆もなんで待とうとしなかったんだ……。


「ま、いいんじゃない? なんていうかさー、うちらと合わないじゃんアイツ。なんで同じ班になったか分からないんだけど。もしかしてあまりだったの?」

「……ほら、僕達の引率をしていた吉岡先生って、古い考えの人だったし」

「あーなるほど。いつもつるんでる俺達に、いつもすぐに帰るシズマを入れてやろうとか考えていたのか」

「そういうのいらないんだよねー。なんで修学旅行でそんなおもりみたいなことしなきゃならないのか意味不明なんだけど」


 おーおー……好き勝手言ってくれちゃってまぁ。

 これ以上いるとなんだかイライラして手出しちゃいそうなんで、先に行こう。

 そうして連中を捨て置き、森を別方向に進んでいると、水の流れる音が聞こえてきた。

 音のする方へ向かうと、大きくはないが、小川という規模ではない川を見つけた。

 これを辿ればどこかに出られるかと思い、さらに進んでいくと、今度は大きな崖に出た。

 しかも水が凄い勢いで流れ落ちているし、他にも川があったのようで、それらも合流して随分とでかい滝になっていた。ナイアガラとかこういう感じなのだろうか?


「あー……あっちの崖に建物っぽいの見えるな」


 さらに移動。さっきの連中に追い抜かれないようにしないと。

 すると、どうやら既に追い抜かれていたようで、建物の前の広場で、先程とは違う、まるで熊のような大きなモンスターと交戦中だった。

 ふむ……もしかして、正しい道を選べる能力みたいなの持ってる子がいるのかね?

 あ、そういや俺もそういうアイテム持ってたっけ。


「にしても邪魔だな、あそこにいられると。まぁいいか」


 そのまま、交戦中の広場を通り抜けて建物を目指す。


「新手か!?」

「いや、人? すみません、言葉通じますか!?」


 無視無視。そのまま横を素通りして建物に向かおうとすると、今度は連中が相手をしているモンスターと同型の相手がこちらに向かってきた。


「邪魔だ」


 片手で強く薙ぎ払うと、ものすごい勢いで吹っ飛んでいった。

 やっぱり強い。そうだよなぁ……ネトゲとはいえ、ゲームの中じゃ自分の身体の一〇倍以上あるドラゴンだろうがなんだろうか倒せるんだし、こんな相手に苦戦するはずもないか。


「んな!?」

「一撃で!?」

「すげえ……アンタ、助けてくれ!」


 ここで無視したらダメですかね? いや、する。

 さらばだ、お前らにかける情はないんです。たとえ原因がその腐れ女だとしても、なんの疑いもなく置いてったことに変わりはないので。


「なぁ!? おいってば!」

「まだ一匹いる! シゲル、集中しろ!」

「ああ、くそ……!」

「僕が最強のはずじゃなかったのか……なんで……」


 知らんがな。たぶんその中だと最強なんだと思いますよ。

 ただ……可哀そうなので回復薬だけ置いておきますね。一本だけだから分け合って飲みましょう。間違ってもそれで仲間割れしたりするなよ、どうせするだろうけど。






 辿り着いた場所は、建物というよりは関所のような場所だった。

 ただ門と通路があるだけで誰もいない。そしてそこを抜けると――


「おお! 一人目が現れたぞ! 無事にここを抜け出した、成功だ!」


 現実世界では見慣れない、まるでゲームや映画で出てきそうな、中世モチーフのファンタジー作品のような鎧姿の集団や、いかにも貴族らしい衣装を纏った人物、それに……王冠を頭に乗せた男性が待ち構えていた。

 すげえ、コテコテのファンタジーだ、ここ。


「勇者よ、お主の名前を聞かせてくれないか!」


 すると、王様とおぼしき男性が話しかけてきた。

『勇者よ』て……本当に昔のRPGみたいなこと言うんですね貴方。

 しかし名前か……じゃあキャラ名って事で……。


「“シレント”。ここはどこで、お前達が何者なのか教えて貰いたい」


 どうも、静馬の静がサイレントなので、そこから取ったシレントでございます。

 オンラインゲーム『エルダーシーオンライン』において、一応それなりにプレイしてエンドコンテンツを全て突破してるキャラクターでございます。

 RPはしない主義だけど、今は状況が状況だ、舐められたら終わりだ。

 少しぶっきらぼうに、愛想を見せないように話す。


「貴様、王に向かってその態度は――」

「良い、何も知らぬのだろう。ここは『ダスターフィル』という大陸の、『ゴルダ王国』という国で、私はその王だ。ヌシは……私の国が召喚した異世界の勇者なのだ」

「呼んだ目的は。戻ることは可能なのか?」

「目的は、今通って来たような異界化した領域、通称『ダンジョン』と呼ばれる場所に赴き、そこである物を探してきて欲しいのだ。その力で私は国に力をもたらし、平和を築こうと思っている。そして元の世界に戻る方法は……もしかすれば、どこかのダンジョンに方法が残されているかもしれんな。この呼び出す為の術も、ダンジョンよりもたらされたものなのだから」


 戻る手段とか用意してないんかーい。

 完全に呼び出したら使い潰す気マンマンじゃないですか、これ絶対平和をもたらすとか言っておいて、世界を支配するとか考えてるパターンですわ。


「ところで……シレント殿の他に人はいなかったのかね?」

「いた。他に数名、見慣れない服を着た若い集団が。俺とは違う世界から呼ばれたのではないか?」

「なんと! 異なる世界から同時に呼ばれることもあったのか……」

「国王、やはり異種族混合で生贄を差し出したことが原因なのではないでしょうか」

「ふむ……しかし、同時に『世界が複数、無数に存在している』という言葉を裏付ける結果でもある、か」


 生贄? え、何、誰か犠牲にして俺達呼ばれたんかこれ。

 もう俺の中でこの連中への不信感が上がりまくってるんですが。


「シレント殿、ではもう少しここで待ってもらえないだろうか。他の者が現れたら、まとめて其方達を城に案内する。待遇は保障するぞ、そこでこの世界のことを知ってもらいたいのだ」

「……分かった」


 今すぐガン無視して逃亡したいんですけど、この世界のことを教わることが出来るのなら、我慢します。

 用事が済んだら早々にこの国は捨てて逃げた方がいいよな、絶対。

 もう開き直って好き勝手やろうかと思います。

 俺は王様の取り巻きと思われる兵士に連れられ、大きな天幕の中で一人待つことになった。

 そこで、今のうちにこのキャラクターになった状態で何が出来るのか、とりあえずメニューを開いてみる。




オプションメニュー


所持品

装備

キャラクターステータス

マップ/クエスト

メール/チャット

ログアウト/キャラクターチェンジ




 おお……全部そのまんまだ! けどログアウトって……なに、人生ログアウトしちゃうの? ワンタッチ自殺ボタンなのこれ?


「そりゃどこにもログインしてないからなぁ……下手にいじるのは今はやめておこうかな……」


 それにキャラクターチェンジも――え?


「選べる……だと……?」


 おいおい、まさか俺の大量の倉庫キャラとかサブキャラにもなれるのか!?

 マジかよ、ちょっと試してみよう。

 項目を操作し、現在『シレント』に合わさっているカーソルを、一つ下の『レント』に変更する。

 名前の由来は察して。俺に名前を付けるセンスはないのだ。

 すると、自分の身体が光に包まれ、気が付くと視界がだいぶ下がっていた。


「あ、あー……やべぇ、さっきはあまり気にしてなかったけどめっちゃ声変わってる」


 手のひらを見る。ちっちゃい! 子供の手! 服装、だぼだぼなローブ! 可愛い!

 そして顔を手で触れると……小さくてつるつる。鏡、どこかに鏡はないのか。


「あ、あった。うおおマジかよ……イエスロリータノータッチって昔から言うけど、俺がロリータになったらどうするんだよ……!」


 そこに映っていたのは、淡い茶髪を伸ばした女の子だった。

 所謂エルフ、耳が長くて薄い本でオークに襲われたり故郷の森を燃やされたりするのでお馴染みのファンタジー種族の美少女……いや、美幼女だった。


「まじかー……別に俺ロリコンじゃないけどこれは可愛いわ……ネタで作ってよかったぁ……」


 すると、外からざわめき、そして大きな声が聞こえてきた。


『ふざけるな! 勝手に呼んでおいてそれで戻れないってなんだよ!』


 どうやら、さっきの連中も出てきたようだ。俺は急いで元のキャラクター、シレントの姿に戻す。

 すると鏡には、仏頂面の男の姿があった。

 顔に傷、そしてどこか鋭い目つき。まさしく百戦錬磨の戦士という風貌だ。

 あとゲーム特有のイケメンいやイケおじ。うむ……これは妄想がはかどりますな。

 後で一通り全キャラの容姿を確認しないと。


「すみませんシレント殿。他の人間も出てきましたので、一緒に移送させて頂きます」

「分かった」


 テントを出ると、誰一人欠けることのない元クラスメイト達がいた。

 今聞こえてきた大声から察するに、俺と同じ説明を受けたんだろう。


「あ! お前さっきの! どういうつもりだ! なんで助けてくれなかった!」

「知らん。見知らぬ土地で見知らぬ人間を助ける程俺は甘くない。お前達が魔物でない保証がどこにあった?」

「魔物って……」

「どうやら、俺はこことも、お前達とも違う世界から呼ばれたらしくてな」


 憤慨するムラキ達にそう説明し、もう話すことはないと言わんばかりに背を向け、一足先に馬車に乗り込む。

 さて……ここからどうなるのか。ある程度常識やら世界のことを学んだら……逃亡するか?

 なーんかこの連中というかこの国、信用出来ないんだよ……。

 馬車の中は、思いのほか座席も柔らかく快適だった。それなりに文明も進んでいるのだろうか?


「す、すみません隣失礼します」


 すると、隣にイナミが座った。


「凄く強いんですね、魔物がいる世界から来たんですか?」


 無視。取り入ろうってつもりかね。信用しちゃいけない人間だってことはよーく理解しましたから。清楚系クズってヤツだろお前。騙されたわ。

 イナミや他の面々に話しかけられるも、それら全てを無視しながら、進む馬車に揺られていく――

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