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襲撃

 突然、聖廟殿に大きな揺れが起こり、衝撃音が鳴り響いた。

「結界の一部が破られたっ」

 一麒(かずき)が飛び起きる。同時に僕の脳裏に映像が浮かんだ。

「中庭だ! 僕のっ僕の庭が荒らされてる!」

「リン? わかるのだな? よし! 行くぞ」

 一麒(かずき)が僕を抱えるとその姿を変えた。金色の光に包まれると僕は麒麟(きりん)の背中に乗っていた。僕は『いつものように』首の後ろのおくれ毛を掴むと詠唱を唱える準備を始めた。

 麒麟(きりん)は蹄を鳴らすと中庭までひとっ飛びに移動する。昼間せっかく手入れした庭は見るも無残な荒地と化していた。どろどろとした黒い塊が湧いている。


「また来たのかっ。もう同じ手には乗らぬよ」

 次々と浄化の詠唱が僕の口から詩のように流れだす。シミを落とすように僕は黒い塊を清浄していた。闇をつんざく悲鳴のような声に振り向くと白虎(びゃっこ)が舞う様に何かと戦っていた。

白虎(びゃっこ)! 駆けつけてくれたのか?」

「この場所で玄武以外に夜に近づけるのは俺だけだからなっ」 

 白い軍服が風に乗り宙を舞う。闘神の白虎(びゃっこ)を見るのは()()()()だ。

 黒い闇が幾重にも白虎(びゃっこ)に襲い掛かる。麒麟(きりん)が蹄を鳴らし金粉が辺りを照らすと闇が粉砕する。次に僕が詠唱を唱えると黒い闇はうめき声をあげた。

「ぐるぅるる……」

玄武(げんぶ)……? そんなっ」

 そこにいたのは玄武(げんぶ)だった。上半身だけが人型を保っているが下半身は闇に溶けかかっていた。


「……一麒(かずき)様……お、お逃げください」

 かろうじて意識を保っているような玄武(げんぶ)の声は震えていた。麒麟(きりん)の姿を解き一麒(かずき)が現れる。

玄武(げんぶ)、私が逃げると思うてか!」

「そうだ玄武(げんぶ)っ、僕らがお前を捨てるはずなかろうに!」

「り……麟様? そんなはずはない。リンお前はただの人間だっ」 

「え? あれ? 僕……何をして」

 玄武(げんぶ)の叫びにふと我に返った。どうして僕はこんな力が使えたり仲間を助けたいと思ったんだろうか?


「リンっ! 危ないっ」

 僕が戸惑った一瞬の隙をついて闇が広がる。一麒(かずき)が僕を庇って闇に引きずり込まれてしまった。

一麒かずきっ……いっいやだあああ」

 

 ふいに頭の中で何かが弾けた。光の中で優しい声を聴いた。

「りん。私の番。共にこの世界を護る存在」

 ああ、この声は一麒(かずき)だ。僕は。そうだ。僕は麒麟(きりん)なのだ。愛しい。この空も大地も風も緑もすべてが愛しい。でも一番愛しいのは僕の半身。一麒(かずき)だ。


 いやだ。もう一麒(かずき)と離れるのは。あの時と同じように僕らはまた離されてしまうのか?

 あの時……邪悪な力がこの世界を壊そうとし一麒(かずき)を襲おうとした。僕は彼の代わりにこの身を犠牲にしたのだ。僕にとって一麒(かずき)は……。

「そうだ。愛すべきただ一人の(つがい)!」

 一麒(かずき)っ。僕は闇の中に突っ込んだ。闇はにやりと笑ったような気がした。

「ふんっ! 僕と僕の(つがい)を甘く見るなよ!」

 闇は煙のように漂い形をなさずリンを覆い始める。くそ。どうすれば……。



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