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ラーメン屋の悲劇と...

 いつものラーメン屋。いつもの塩ラーメン。今日は店長のサービスで大盛にしてもらっているそれを食べているときに事は起きたラーメンを食べているのでそばに置いていたスマホからメッセージの着信音がする。箸をおいて内容を見ると、彼女からの一件の連絡が来ていた。


『今、お話できる?』


 俺が頼んでいるラーメンは普段ゆっくり人と話ながら食べているのでバリカタだ。今日はたまたまそいつがいないし、少しぐらいなら大丈夫だろう。


『いいけど』


 とだけ返し、俺は一口ラーメンをすする。うまい。まぁ今彼女から話されることなんて予想がついている。


『別れたいの』


 やっぱりな。最近冷めていたし。今は7月。クラス替えがあってクラスが別れてからほとんど会ってないないしな。


『なるほど、わかった』


 とりあえず了承の意思を示し、そのまま元カノの連絡先を消す。何かあって間違い電話を掛けられても心が痛くなるし、着信も拒否しておこう。


 あの子とは付き合ってから1年は続いていたんだけどやっぱり時の流れと環境の変化には勝てなかったようだ。俺にそれを超える魅力がないともいえる。しかし、1年の月日が無駄になったかのようなこの空虚感はなんだろう。とっくにこうなることは理解していたはずなのに。


「しょっぱいな...」


 心なしか塩ラーメンがいつもよりも少し塩辛く感じる。毎週金曜日に食べているからなじみの味のはずなんだけどな。とりあえず、いつも通りに完食する。やっぱりうまい。いつもよりも心にしみる気がするなぁ...。


 会計を済ませて店を出ようとすると店長に呼び止められる。


「坊主、辛いことがあっても、またこいよ。いつでも大盛サービスしてやるからな!」


 辛いことがあったことがわかるのだろうか。ふとほっぺを触ると少し湿っぽかった。


「そっか、俺、辛くて泣いていたんだな」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 誰もいない家に帰り、そしていつものようにゲームを開く。元カノとはよくこのゲームを一緒にプレイしたものだ。しかし、その機会はもう来ないだろう。フレンドの欄から元カノを削除する。


 しかしこのゲームには他の友達との思いでも多くある。


「やめられないな...」


 俺は友達と叫びながらやったこのゲームをしたときのことを思い出して苦笑する。楽しかったな。


 今の時間は八時か。俺は1人暮らしだから、誰かがここに来ることもない。


「なんでこんなにも寂しいんだろうな...」


 この1年間の喪失感だろうか。このすさんだ心を埋められるものはあるのだろうか。


 土日をかけて考えてはみたが、一つも思い浮かぶことはなく、むしろ学校に行かなければいかないときが近づく気まずさなどもあり、だんだんと思考が働かなくなっていった。幸いなことにもうすぐ夏休みだから、少し頑張ればこの気まずさからは解放されるだろう。


「学校いかないと」


 月曜の朝。成績のためにもちゃんと学校にはでなくてはいけない。いつものように手早く弁当を作り、ささっと準備を済ませ家をでる。俺は家からバスを2本乗り継いでいかなくてはいけないので、いつもでる時間は早いんだ。


 休日の間はあまりよく眠れなかったので、バスの中では寝てしまった。いつの間にか学校の下のバス停についていたので降りて学校に向かう。彼女ができる前は幼馴染と登校していたが、それも今はない。1人での登校には慣れたものだ。


 教室につくと、席替えのくじで決められた俺の席が誰かに不当占拠されていた。誰かと思えば、うちの幼馴染の滝沢めいじゃないか。俺の幼馴染ながらほんとアイドル顔負けの顔立ちをしているな。きっとあの性格がなければもっとモテるのだろう。俺と違って。


「おい、お前...。俺は朝勉強するために席を使うといってるじゃないか。返せ」


 いくら容姿がよくて俺の幼馴染だろうと邪魔であることに変わりはない。第一、さすがに夏休み前のテストがもうじきあるのに勉強しないのはやばい。


「いやだね、私はこの廊下側一番後ろの涼しい席がいいの。ところでなんか目、赤くない?」


 目、赤くなってるのか。そんなに泣いた記憶はないんだけどな。


「気のせいだろ。というか夏休み前テストそろそろなんだからさっさと勉強させろや」


 めいは俺の言葉を聞いて目を丸くして、「まじ?」と聞いてきた。


「マジだ」


「嘘だぁ!! ほ、補習はいやだ!」


 うーん予想通りの反応。こいつは一番初めの定期考査で1教科だけだが赤点を取って補習くらってるからなぁ。同じく補修がある夏休み前テストが嫌なんだろう。


「知らん。マジで勉強するからどけ」


 マジで席返してくれないと困る。ほんとに。


「今日なんか機嫌悪くない?」


「別にいつもとかわらないけど」


 まぁ何ともないわけではないが、それをこいつが知る必要はないしな。


「そ、そう? あとさー今日帰りうちきて勉強教えてよ~」


「いやだね」


 こいつに教えるとろくなことがない。きっと高2にもなって因数分解がわからない、平方完成が分からないなどと騒ぐに違いない。


「数学のX軸Y軸ってのが分からんくてさー」


「...うそだろ?」


 絶望の一言なんだが。予想のはるか先を行ったよお前は。悪い意味で。


「だからさー頼むよ~」


 先の一言で完全に希望を失ったわ。


「無理だ」


「ラーメンおごるよ?」


「仕方ない。勉強一緒に頑張ろうか」


 しかし腐ってもこいつは幼馴染だ。少しは救済してやらないと...。ってなんか前にも同じことを考えたことがあるような気がするが...。まぁいい。


「やったね!じゃあ今日一緒にかえろー」


 そういえばもう彼女もいないわけだし、別にこいつと一緒に帰ってもいいのか。いつもは断っていたが...。今日ぐらいはな。


「いいぞ」


「え、まじ?」


「まじまじ」


 こいつが信じられないようなものを見るような目で見てくる。なんでだよ。


「いつもは一緒に帰ってくれないのに?」


「まぁ今日ぐらいはな」


「...少し希望見えたかも」


「あ?なんだって?」


 小さな声で何かを言ったような気がしたが。気のせいかな?


「え、なんでもないって。じゃあ帰り掃除まっててね!」


 そいってめいは自席へ戻って行った。席返してくれるの珍しいなと思っていたら、朝のホームルームの5分前だった。


「あいつ!!」


「おはよう柳君。そんなに怒ってどうしたのさ」


 話しかけてきた女の子は隣の席の宮内(みやうち) 七菜香(ななか)さん。いつも朝挨拶してくれる優しい人だ。宮内さんはいつも朝のホームルームギリギリで学校についている。


「おはよう、宮内さん。いや、いつもの人がギリギリまで席を返してくれなかったからさ」


 いつも俺は昼休みも席を取られている。その時は隣に宮内さんも座っているので、もはや顔なじみだ。


「あはは、めいちゃんも席かわいそうだし、勘弁してあげて?」


 実はめいの席は教壇前。まぁ確かにかわいそうだけど。


「それでもさすがに席取りすぎだと思うんだ」


「否定はしないけどね?」


 友達である七菜香さんにすら否定されないほどやっているのがあいつだ。さすがにそろそろどうにかしないとな。


「はーいそれじゃあ朝のホームルームを始めるぞ!」


 先生が入ってきて、朝の挨拶をする。今日も1日始まるな。神様、今週は気まずい出来事がありませんように!!

評価をいただけるとやる気が上がって連載ペースが上がるかもしれません。今のところは週3投稿の予定です。誤字脱字もあれば、ご報告いただけるとありがたいです!

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