悪魔がウチにおりまして・93
ウチにはクモがいる。
一応ゲンを担ぐクモが。
「はい、おかゆだよー」
今日は1月7日。
つまり七草かゆの日です…あれ?クモがなんか荒ぶってる。
「悪魔、通訳してくれる?」
この前悪魔がクモの言っていることわかっていたからね。
「あいー?クモちゃんどうしました?」
悪魔とクモが向き合いながら頷き合っている。
わりとシュール。
「クモちゃん、このおかゆは許せないと言っています」
なにおう?
「ニンゲン、七草ちゃんと取ってきました?」
「…スーパーで買うでしょ」
その言葉を聞いたクモ、肩からがっくりと項垂れる。
肩?股?とりあえず、肩。
「クモちゃんにとって七草を取ることは修行なのです。この時期にあまり生えていない七草を見つけ出し集める…まさに未知への挑戦!」
狐が割と冷ややかな目で見ている。
この子現実派だからなぁ。
「なるほど、七草の冒険をご所望ですか」
お前はうどんを啜りながら畳から生えてくるんじゃない。
突如現れた羊に普段相手にしないクモが興味津々で飛びついた。
なんなら悪魔、うぱも羊の周りに集まる。
私はおかゆが冷めるので先食べますね。
「7という数字にはロマンがあります。日本の言い伝えでは7つの宝玉を集めるとなんでも願いを叶えてくれる龍が現れるとか…」
それ、深堀りすると危ないからやめなさい。
「さぁ、今は幻の七草を探す旅にいざ…」
そこまで話していたがいきなりクモが引いている。
あー、私でも言いたいことわかるわ。
(いや、そういうの求めてないんで。ちゃんとした七草であれば)
狐も同じような目でぜんざいを啜っている。
そうなのよねー。
悪魔組と神仏組、こういうところで温度差あるのよねー。
うぱはなんかテンション高そうに宙返りしているけど、いつものことだしなぁ…。
羊はバツが悪くなったのか、懐からビニール袋に包まれた七草を取り出す。
「ちゃんと探してきましたよぅ…。ニンゲン界で信頼できる農家さんですよぅ…」
語尾が急にイラつくからやめなさい。
クモがビニール袋を開けて中を探る…飛び跳ねてる。
胸を撫で下ろす羊。どうやらお眼鏡には適ったみたいで良かったね。
羊の取ってきた七草を新しく炊く。
食べ比べてみると、私にも味の違いが分かるほどおいしかった。
クモをちらりと見る。
サムズアップ!
ウチにはクモがいる。
クモがどうサムズアップ?知らない。




