悪魔がウチにおりまして・91
ウチにはニンゲンがいます。
あれ?逆ですか?
夕方になるとニンゲンが帰ってきました。
スーパーの袋を持っているところをみると、今夜は作るみたいです。
「悪魔、すき焼きでいい?」
「いいですねぇ」
「私もご相伴いたしましょう」
ヤギさんも食べていくのですか?ボクの分が減ってしまいます。
「羊、自分で追加の肉買ってきて。アンタらの食べる量、多すぎるんだから」
ヤギさんはニンゲンになると、ジャケットを羽織って出ていきました。
ニンゲン!?カギを閉めるのですか!?
口に出すとボクの身も危ういのです、お口チャック…というのですかね。
「…あれ?宿主殿ー。開けてくだされー」
ごんちゃんにまで被害が…相変わらず罪深いニンゲンです。
「悪魔ー。手が離せないから開けてきてー」
…ニンゲンは、悪魔を使う、悪いヒトです。
扉を開けるとヤギさんが両手に袋一杯の肉を持っていました。
「宿主殿ー、たくさん買って…」
「悪魔、閉めなさい」
イエス、マム!!
逆らったら何をされるか分かったものではありません。
ヤギさん、イタズラした自分を恨んでください。
お外で泣いている声が聞こえます。
居候は立場が無いのです。
「…宿主殿、ヤギ殿がお外で泣いていますが…」
ごんちゃんはぬるっと部屋に入ってきます。
その域に到達していたのは驚きです。
「そろそろ反省したろうから入れてあげましょう」
「あいー」
ちゃんと入れてあげるニンゲンはなんのかんの言って優しいのです。
「入っていいそうですよー」
玄関先でヤギさんはヤギさんしてました。
泣きながら寝ています。
「お肉が、お肉が悪くなってしまうでしょうに…」
気にするところがそっちで安心です。
ちょうどクモちゃんが帰ってきました。
相変わらず、タイミングがいいのです。
ヤギさんの買ってきたお肉のパックを山積みにして、すき焼きの始まりです。
ボクは知っています。
お仕事帰ってきて、わざわざ割り下を自分で作ってくれていたことを。
ニンゲンの美味しいご飯を食べられるなら、この世界を侵略しないのです。
ボクはニンゲンのウチに居ます。
そうは言っても侵略はお仕事ではないのです。




