悪魔がウチにおりまして・89
ウチには悪魔がいる。
…この言い出し、久しぶりな気がする。
「ニンゲン、おモチ飽きました」
納豆を絡めたモチをはみながら、悪魔は目を細める。
「…3日間、よくもった方よね」
元日深夜に羊が突いたモチをみんなで消費していたものの、すでに3食、3日モチばかり。
雑煮、磯部巻き、お汁粉、カレー。
主食、モチをひたすらに続けた結果一番最初に文句を言ったのは悪魔だった。
こればかりは責める気にはならない。
なぜなら誰が言い出すのか分からないチキンレース、終止符を打ってくれたことにむしろ感謝しなければならないだろうて。
「…言って、良いのですね。おモチ、感謝できなくなって来たのは某だけではなかったのですね…」
狐が涙を浮かべながらモチを伸ばす。
よっぽどのことだけど共感しかない。
ちなみにクモは早々にストライキしました。
歯の無い虫にはやわらかいモチは食べられないようだったので、罪はありません。
「ニンゲン!フライドチキンを!ハンバーガーを寄こすのです!」
悪魔がいきなりジャンクフードを!?
…いや、まぁこれだけモチ食べてたら脂っこい食べ物欲しくなるのはわかりますよ、うんうん。
「…皆さんも飽きました?」
畳から生えてきた羊。
飽きたじゃないんだわ、この元凶!
「新年初の会議の議題はズバリ!今晩は何を食べるか!です!」
嫌にテンションの高い羊に引っ張られ、なんなら畳からホワイトボードを出して緊急会議が始まる。
異議なーし。
「では!何が食べたいですか!」
「フライドチキン!」
「湯豆腐!」
「ラーメン!」
欲望のるつぼよ。ちなみにクモは参戦できません。悪魔がテンション振り切ってて通訳が出来ないからです。
「はい、他には!?」
私たちの言った物以外にすき焼きとイチゴ大福が混ざっている。
…羊、クモだけでなくうぱの言葉もわかるんじゃないか?
「私はピザに一票投じましょう…さぁ!ダイスロール!」
まさに、賽は投げられた…!
結果。
「お味が…恋しいのです…」
サイコロを使って公平に決めた以上、従わなければ角が立ちます。
反論はありません。ありませんが!
「昆布ダシ…美味ちいのです…」
さすがにモチの後湯豆腐はどうなのよ!
ウチには狐がいる。
あっさりもの好きな、狐が。
次の日はちゃんとこってりになりました。




