悪魔がウチにおりまして・884
ウチには悪魔がいる。
というか、ここはウチじゃないパターンだったか。
むくりと起き上がるとそこは土の壁。
落ちるしずくの音。じめじめした地面。
お腹を掻きながら寝ている悪魔。
「悪魔、良く寝てられるわねぇ」
「目玉焼きに卵ソースは合いませんよぅ」
絶対に合うけどかけたくないソースだな、それ。
「ほら、起きてー。さっさと抜け出すわよー」
私もふてぶてしくなったものだわ。
「むぅ、あと3時間……」
置いていってやろうかしら。
「こんなところで寝てたらキノコ生えるわよ」
「地産地消できますー」
よし、置いていきましょう。
あまりにもはっきりと発した寝言で捨ておくことを決めた。
「ニンゲン!ボクがキノコの苗床になっても良いというのですか!」
寝言じゃなくて起きていたのね。
「そんな意識はっきりしているなら逆に悪魔の苗床にしてやんなさい」
「なるほど!?」
なるほどじゃねーのよ。おちおちボケられもしない。
悪魔が起きたことで周囲を見回して出口が無いか調べる。
一縷の光も、ない。
「ねぇ悪魔」
「なんです、ニンゲン」
なんで光も見えない洞窟?なのにこんなにお互いの事ははっきりみえるのかしら?
「松明システムが不評だったためと聞いてます」
やめなさい、システム的な話は。
周囲が見えるのは良いが進むべき方向がわからない。
どうやら1本道の中間、進むか戻るか。
「ニンゲン、ここからスタートなのでどっちも進むです」
揚げ足取らないの、帰らなきゃいけないんだから。
「そうしたら悪魔、こっち。私こっちなら?」
「それどっちかしか生き残れないやつじゃないです?」
どうせふたりで生き残る気がするけどね。
「そうしたらこうしましょう。このスマホでナビを出して……あ、これ無しです。つまらなくなります」
つまらなくてよろしい。
悪魔からスマホをふんだくると、圏外。
「……ダメじゃない」
「ダメみたいです。こうなったら仕方ありません……ぽんちゃーん!」
「呼びました?」
悪魔の一声で天井からモグラが顔を出す。
陽の光と共にだった。
「……自分で呼んどいてなんですが、情緒もなにもないですね」
それを感じるだけ成長じゃない?
ウチらは農場にいた。
ミミズ穴、らしいよ。ウチらがいたのは。




