悪魔がウチにおりまして・879
ウチには悪魔がいる。
うつ伏せで寝ている悪魔が。
いや、正確には寝ていない。10分に1回のペースでこちらをちらちら見ては視線を戻している。
ええい、かまってちゃんめ。
「どうしたの、悪魔」
「なんでも無いのですー、カツ丼が食べたいだけなのですー」
どうもしているじゃない。
「そうしたらお昼カツ丼にする?」
何も決めていなかったのでちょうどいい。
私の言葉を聞いて悪魔は目を丸くしている、なんなのよ。
「ニンゲンが、ボクのお願いを、聞く……?まさかあなたは偽物……?」
カツ丼くらいでそんな疑いますか。
「クモー、悪魔はカツ丼いらないみたいだからアンタはどうする?」
天井近くのロフトに居たクモは「ひれ、ごはんすくなめ、えびふらいも」と紙を垂らす。
トッピング頼むとは意外。
「だー!ニンゲンは鬼ですか、悪魔ですか!」
悪魔はアンタだ。
「ボクだってカツ丼食べたいのです!ロース3枚乗せ、メンチカツトッピング、ソースだくで!」
好みが若いのよ、アンタ。
「でも!それでも!ボクは抗わなければならないのです!」
「悪魔、正座」
「あい」
高ぶっている悪魔を落ち着けるために正座させる。
「たかだかカツ丼のひとつやふたつで」
「みっつ食べたいです」
「正座」
「してます」
じゃあ土下座しなさい。
「我慢するなら我慢するで良いのよ。だけどかまって欲しいからって逆上するのは違うでしょ」
「だって、最近ニンゲン……あれ?いつも通りです」
そりゃそうでしょう。
「何をアンタこじらせているんだが」
悪魔に出前のチラシを見せた。
「自分で出すなら良いけどロース3枚はくどいよ?」
「むぅ、ならメンチ3つに」
くどさが増した!?
「ちなみに私は親子丼をお願いします」
いつの間にか生えて来た羊がスマホポチポチしていた。
ウチらは丼を受け取る。
「どうも、配達ついでに食べて行っていいです?」
仕事に戻りなさい、牛。




