悪魔がウチにおりまして・85
「さぁて、日ごろのストレス発散しちゃおうかなぁ」
誰かこの姉を止めろください。
「なんだ、騒々しい」
門をぶっ放された騒ぎを聞きつけ専務が現れた。
「説明は要らないでしょう?門、開けろ。今すぐに」
苛立ちを隠そうとしないお姉。
しかし専務は涼しい顔で受け流す。
「ニンゲンがニンゲンとして生きられている。些末な問題で盟約を破るつもりか?」
盟約?
お姉、悪魔にも顔広かったの?
「だ、そうよ。どうするの、専務さん?」
急に微笑みながらバズーカを構えるお姉。
「そんなもので私に傷ひとつ付かないことは承知だろう」
歯牙にもかけない態度に、次元閉じてきたときに積もりに積もったストレスが爆発した。
自分でも気が付いたら専務の前に。
大きく振りかぶると顔面にこぶしをめり込ませていた。
数メートル後ろの壁にめり込む専務。
そのまま呆然としているヤツの胸倉をつかむとぐいっと引き寄せる。
「返して」
言葉など、それで十分だろう。
目を丸くしている専務がぼそりとつぶやく。
「ニンゲン、後悔するぞ」
「しない」
無言になる専務。
一瞬だったか、十秒ほど流れたかは分からない。
すっと腕を上げて指を鳴らす。
その瞬間空気が変わった。
「時間を閉じる前に戻した。好きにしろ」
それだけ言うとそのまま専務は消えていった。
抜けようと思えばいつでも抜けられたのか…あれ?
気が付けば。
私のことを全力で羽交い締めにしていたウチの子たちの姿が見えた。
特に羊、真っ青。
「専務に歯向かうなんて!消し炭になっていても文句は言えないのですよ!」
消し炭にされたらしゃべれないでしょうに。
「ニンゲン…ボクの事見えるのですか…ちゃんと、わかるのですか…」
ぽろぽろと涙をこぼす悪魔。
人前で泣くんじゃあり…悪魔の事言えないか。
「空気読めてない自覚はあるけど…さっさと裂け目閉じて帰らないとまずいかも。千を超える兵隊の気配が…」
お姉が戦争吹っ掛けるからでしょ!!
皆で走っている。
後ろから槍を持った悪魔に追われながら。




