悪魔がウチにおりまして・873
私は体重計に乗る。
くるくると変わる数字を見つめている。
「太った……」
最近体重を計っていない、そんな気の迷いからつい乗ってしまった体重計。
その数字はとてもじゃないが現実とは思えない数字を叩き出し、幻であると確信した。
そう、これは現実ではない。
少しばかりモグラが持ってきたイモとか大福とかたくさん食べた気はするけど。
その上で運動は特にせず、なんなら寒くて布団にくるまる時間は増えた気がするけど。
それもこれもつかの間の夢なのだ。
「ニンゲン、現実を見たほうが良いのです」
ずびしっどががっばちこーん!
私の耳に聞こえた、妙にぽきゅぽきゅとした声なんか無かった、いいね。
「ニンゲン!?今回は10:0でニンゲンが悪いですよ!?」
鼻血ぶーした悪魔が両手をあげて威嚇ポーズ。
レッサーパンダかな?
「ニンゲン、ダイエットですか?」
そこ、目を輝かせるところかなぁ?
「アンタ、良いダイエット知ってるの?」
そんな事言いながらコイツの体型を見る。
……ダイエットに関して説得力がみじんもない身体をしている。
「アンタ、自分がダイエットとか考えてる?」
「いいえ!ボクはいつでもパーフェクトぼでーなので!」
その自信、今だけは欲しい。
「毛を刈るとか無しよ?」
「えっと、スマホで調べるので待ってください」
痩せられるのアンタ限定じゃない。
「違います、羊さんもです!」
アヤツは定期的に刈り取ってあげなさい。
「ニンゲン、出ました!痩せるには泳ぐと良いそうです!」
水泳?確かに良いって聞くけど。
「この季節、水の中に入ると体温を保つためにカロリーを消費するそうです。そのため、冬に水に入ると一気に骨まで痩せられると」
すぱこーん!
「真面目に」
この季節に野外の水に入ったらそれは凍死なのよ。
「お、温水プールでも良いそうですよ」
ハリセンされた悪魔はよろよろと起き上がる。
ただ重大な問題として、人に見せられる身体をしてないのよね。
「大丈夫です、ボクが良い場所を案内します!」
悪魔が?なんか案内される場所不安なんだけど」
「あー、べっちゃん?ニンゲンが痩せたいそうでー、血の池ひとり予約を「しません!」
よりにもよって地獄送りすんじゃないよ!
ウチにはべっちゃんがいる。
「久しぶりに呼ばれたので顔だけ出しに来ました、これお土産」
手土産に地獄まんじゅうを持ってきたべっちゃんが。




