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悪魔がウチにおりまして・872

ウチには悪魔がいる。

キャンバスに釘を打ち付けている悪魔が。


「ニンゲン!芸術の秋です!」

「冬よ?」

暦の上では春かもしれないけどこの寒さは冬でいいでしょう。

「芸術に季節は関係ないのです!」

なら季節を言わないで?

「つーわけでニンゲン、キャンバス支えてもらえるですー?」

急に雑になったなー。

悪魔に渡された木枠を掴むと遠慮なく釘を打っている。

結構強い。

「それはそうと、いきなりなんで絵なんて描く気になったの?」

トンカンしている悪魔がぴたりと手を止めた。

「ニンゲン、絵というのは高く売れるらしいですね」

「まぁ、価値があれば」

急に流れがきな臭くなってきたなぁ。

「ところできな臭いの”きな”ってなんだろうね」

「木綿の焦げる匂いだそうです。露骨に話逸らしましたね?」

ここで終わらせてあげる情けを無視しおって。

「高く売るためには評価されないと」

たしなめる言葉は悪魔には届いていない。

「評価など、ボクらの力を使えばちちんぷいぷいです!」

ずいぶん古めかしい魔法の言葉を言うものですな。

「要するに、捏造」

「ニンゲン、メッ」

叱られました、スリッパを乗せましょう。

「さぁ!続きを!ボクの芸術作品を!」

目を金に変えながら悪魔は釘を打ち付ける。

キャンパスが出来上がると、悪魔は水彩絵の具を取り出した。

「さぁニンゲン!脱ぐのです!」

「言葉引っ込めるならこめかみ蹴るだけで我慢するけど?」

「うぱちゃん!バラを咥えるのです!」

なんでうぱは……と思ったけど、うぱはそもそも服着てない。

「なんで私に服脱がせようとしたのよ」

なぜか頭を押さえている悪魔に尋ねるとぽそぽそと答える。

「お金高いの、裸婦像が多いじゃないですか」

そんな理由?だとしたらもう1回蹴るわよ?

「悪魔、それ水彩絵の具でしょ?それだと売れないわよ?」

「えっ?」

うぱも咥えていたバラを落とす。ノリノリでしたか。

「だって剥がれちゃうから。長く残すなら油絵じゃないと」

でも油絵って描くの難しいって聞いたけど。

「……これにサラダ油混ぜれば」

「絶対ダメでしょうね」


ウチには悪魔がいる。

「これはこれで良いので描き上げます。うぱちゃん!バラを!」

結局完成まで描き上げた悪魔が。

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