悪魔がウチにおりまして・866
ウチには悪魔がいる。
スーツを着て小難しい顔をしている悪魔が。
「ニンゲン、時を戻したいと考えたことはありませんか」
「そのスーツ、どこで作ったの?」
こんな着ぐるみ体型なのに、ぴったりヨレることなくスーツを着こなしている悪魔。
悪魔がすごいというよりも、このスーツを仕立てた人がすごい。
「いいでしょー!やどかりんりんで仕立ててもらったのですー!」
ヤドカリ、すげぇー。
「じゃなくて!ニンゲン!時間を!戻したいではなかろうか!」
言葉がおかしくなってるよ。
「急にどうしたの、そんな無茶言って」
肩で息をしている悪魔が深呼吸して整えている。
「いやですね、作者が泣いているんですよ。毎日続けていたのにボクらの観察日記を投稿し忘れたと」
肖像権請求してもいいかもしれないな、あの作者に。
「そうは言っても、あの作者仕事してるの?」
「ニンゲン!いけない!」
悪魔はズビシ!と指をさしてくる。
「悪魔には触れちゃならん事があるのです!」
そんなに重いこと?
「それにその事を言ってるの自身も作者でしょ?」
「触れちゃならんのです」
口の前で指を立ててしーしている悪魔。
「ニンゲン、それは本当に消されます」
そんなにやばいこと言ったつもりは無いんだけど。
「で、そのせいで今日は時を戻す話に?」
「そんなことできないのは百も承知みたいですね、なんか『デロリアン最高!』とか叫んでました」
免許ないでしょう、アンタは。
「なのでニンゲン、時を戻せるならどうします?」
「え、いらない」
時を戻す、聞こえは良いけど今の人生を無かったことにしちゃうんでしょ?
そんなことしたらせっかくしてきた事も、会ってきた子たちとも離れ離れになっちゃうじゃない。
「ふぅん、ふぅーん」
悪魔が目を丸くした後、によによと気味の悪い笑みを浮かべている。
「何よ、気持ち悪い」
「ニンゲン、ボクたちと会ったことなくしたく無いですかぁ、そうですかぁ」
「そりゃそうじゃない?」
迷惑でしかないけど、その迷惑にも慣れてきたからね。別に……。
そんな返しに悪魔が顔を赤らめる。
「ふ、ふううううん!」
そのまま、ドタバタと出かけていった。
……なんだっていうのだろうか。
ウチには悪魔がいる。
巨大なケーキを買って戻って来た悪魔が。




