悪魔がウチにおりまして・857
城には悪魔がいる。
自分の手で金ぴかの枠を持っている悪魔が。
「さぁ、ニンゲン!秘密の呪文を唱えるのです!」
「悪魔よ、悪魔よ、悪魔さんー、世界で一番美しいのはだあれー」
この呪文、どうにかならんかったのか。
「ふっふっふ……わかりません!」
だと思ったし、なんでこの呪文にした?
「帰っていいかな?」
帰れるのかは知らないけれど、一緒の部屋にいる必要はないものね。
「待つのです、ニンゲン!ニンゲンには無いのですか、金銀財宝への憧れが!」
「無い」
アンタが提供する美味しい話、基本いわくしかなさそうなんだもの。
「ニンゲンー、ニンゲンはそんな尊きニンゲンではないはずですー。休日に惰眠を貪り、昼過ぎにカップ麺をすすり、それをつまみに酒を飲む、そんな見ていられない生活をしているじゃないですかー」
人の名誉を毀損するのやめてくれない?
寝てるところまでしか合ってないじゃない。
「今回はなんのモノマネ?」
元ネタはなんとなくわかっているけど、それの場合私が義理の娘にリンゴをふるまわないといけないじゃない。
「大丈夫!ちゃんとぽんちゃんからアップルパイを作ってもらってます!」
むしろそのパイを後でみんなで食べましょう。
「と、言うわけでニンゲン!欲にまみれた願いを言うのです!」
「アップルパイ食べたい」
枠を真っ二つに外した悪魔、そこでくっついていたのね。
「それは後です!ニンゲン、物語を楽しんでくれませんか!」
アンタが(勝手に)始めた物語だろうよ。
「ニンゲンさん!話を進めてくれないと、ニンゲンさんの命令で狙撃をする私の出番が訪れません!」
壁の向こうからひょっこり顔を出した羊。
あれ、今の元ネタって銃なんか出てきたっけ?
「ひつーじさん!どうどうです!羊さんにはニンゲンが持って行ったアップルパイ(プラ製)を撃ちぬいてもらう必要があるのです!」
この小説は、食べ物を大切にしております。
「とういか、私が持っていくの?誰に?」
悪魔は目を丸くする。
「誰、に?」
決めてなかったのかい。
「ミミ君!そんな初歩的なことも考えて無かったのですか!」
珍しくかりかりしている羊、どうした。
「仕事を終えないとアップルパイが食べられません!」
モグラのアップルパイ、大人気だなぁ。
「いっそ私の願いをアップルパイ食べたいにしたら?」
『それだ!』
いいのか、そんな軽いので。
城では山盛りのアップルパイが並ぶ。
「この量、どうしたの?」
「先物取引でリンゴが余ったそうです」
闇の深いアップルパイが……罪の味よねぇ。




