悪魔がウチにおりまして・852
窓から見える景色は銀世界。
……ここ4階なんだけど。
「ぼたぁぁぁぁぁゆきぃぃぃぃぃ、ねぇぇぇ!」
やめなさい怒られるわよ、私に。
銀世界っていうと眼下に広がると思うじゃない?
ベランダの上まで雪が積もってるのよね。
「ニンゲン、ここを掘ればかまくら作れますねっ!」
寒がりキャラを取り戻しなさい、悪魔。
「ふっふっふ、お困りのようですね」
「その声はっ!」
1匹しかいないでしょ、雪のせいで出れないんだから。
そこにはマントと目出しマスクを付けた狐が立っていた。
「恥ずかしくないの?」
「少ち」
なら脱ぎなさい、今なら見なかった事にできるから。
「ドクターコン!何か解決策でも!?」
耳まで赤くなってるからやめてあげて。
「この雪の原因は不明、ちかし某の発明があれば!」
ちらちらとこちらを見る2匹。えー、私?
「きつねちゃんー、なにがあるっていうのー」
子どもの相手は疲れます。
「よくぞ聞いてくれまちた!家紋、クモ殿!」
慣れない英語のせいで漢字になってるのよ。
狐がマントを翻し、クモが現れる。
クモは何か機械の上に乗っている。
「ニンゲン、スコップでいけますよー」
悪魔!飽きて掘り始めるんじゃないよ!
「クモ殿にドローンに乗ってもらい、外の様子を見てもらいます」
珍しくツッコミが足りない、久しぶりだわー。
「クモ殿にはわたあめ1週間分で取引ちました!」
……あー、あーーーー!いいや、話を進めましょう。
「それでは、すいっち、おん!」
ドローンのプロペラが回り始めて宙に……浮くわけないわよね。
クモ、1メートル越えてるし。
「いざ、はっくつー!」
悪魔ー、外の様子よろしくー。
「クモ殿、飛ぶのです!限界を越えるのです!」
クモ、わたあめが待ってるよ。私に助けを求める目を向けないの。
「ニンゲンーサクサク進みまぁぁぁぁぁ」
……落ちたわね。
振り向くと雪壁にぽっかり穴が開いている。
「クモ殿、わたあめは3日分に減らちても?」
値切るの!?……話が進まないから放置。
雪壁を見てみると1メートルもなく横もマンション幅位しかない。
ウチに前だけ雪が積もってるの?
「……誰がやりそう?狐ちゃん」
「聞く必要、あります?」
だよねぇ、さっき落ちたやつよねぇ。
「ニンゲンー、氷買ってきて雪足しましょー」
私と狐は頷き合い、登ってきた悪魔を再び蹴り飛ばした。
ウチには悪魔がいる。
泣きながらドライヤーで雪を溶かしている悪魔が。




