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悪魔がウチにおりまして・850

ウチには悪魔がいる。

猟銃を携えた悪魔が。


おもむろに足元の草をむしる悪魔。

「ふむ……風は南南東、強さは2です……」

それゴルフ以外でやるの、初めて見た。

そんな悪魔はだだっ広い草原で茂みに目を凝らしている。

「今回は、何?」

「ニンゲン、狩りの時間に油断は禁物。一瞬の油断が命取りです」

きらりと歯を光らせてキメ顔の悪魔。

「帰り道どっち?」

「ニンゲン、最近連れなくありません?」

それくらい付き合いたくないシチュエーションが増えている自覚を持ちなさい。

「それに昨今、狩猟なんかしたら愛護団体がうるさいのよ」

「ボクのことはよく殴って「あ?」今回は大丈夫なのですー!」

悪魔が指笛を鳴らすと、茂みから背中に弓道の的を立てたクモがのっそり出てくる。

間違いなく、無理矢理やらされている。顔がそう言っている。

「今回の的はクモちゃんに背負ってもらってます!ノー殺生、ノーライフなのです!」

その言葉だとただのジェノサイダーなの気付いてる?

「さぁ、クモちゃんたち!逃げ回るですー!このコルク銃が火を吹くですー!」

火を吹いたらその弾のコルク、燃える気がするんですが。

そんなことを気にかけることもなく、森の中に入っていく悪魔。

「ニンゲン、油断は禁物……そこかー!」

草の揺れる音だけで、悪魔は振り向きコルク銃を乱射。

当然無駄弾が木の葉に当たって飛んでいく。

「ニンゲン、リロード!」

「持ってないわよ」

なんで私が補給しないといけないのよ。

悪魔が目を丸くして見上げてくる。

「ハック!」

「なんて?」

「F言葉だと規制が怖いです」

許しましょう、よく治安を守ってくれました。

「弾切れだなんて……ボクらは生きて帰れません!」

「そういう設定?」

「シャラップです」

えっと、来た道どっちかなー?

「ニンゲン!危なーい!」

悪魔の叫び声で振り向くと寸前のところでコルク弾が逸れていく。

視線の先には銃を構えた羊。

「避けましたか、やりますね」

「羊ー。あと3行ー」

遠くても羊が言葉を失っているのがわかる。

「ぐはっ……私を倒しても第2第3の羊が現れます……!」

あー、飛び降りた。ぴったり3行でやられる悪役の鏡だね。


森には悪魔がいる。

「ニンゲン、帰り道わかりません!」

「私もです!」

みんなで迷ってしまいましたとさ。

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