悪魔がウチにおりまして・840
昔々いたるところに、悪魔がおりました。
……そんなにたくさん!?
「というわけで今回は昔話なのです、ニンゲン」
うわぁ、たくさんのちっこい悪魔だぁ。
「アンタの生態、どうなってんの?」
「フィクションなので。さすがに分裂は今回だけにしたいです」
うん、それを知れて一安心。
「減れないの?」
「全員意思を持ってるので、我慢してください」
見比べてみると四方八方で好き勝手している悪魔。
組体操をしたり、肩車で積み木を積んでいたり。
あまりにも自由、あまりにも勝手。
「シバく?」
「痛覚は共通じゃないので別に構いませんが」
踏み続けて1UPしてやろうかしら。
「ところで今回の昔話はなんなの?」
以前、羊の策略で川を流れて滝つぼにどんぶらこして行った悪魔太郎だったけど。
「悪魔と羊さん、だそうです」
なんの説明にもなってない解説ありがとう。
これだけたくさんの悪魔がわらわらいる昔話あったっけ?
そんなことを考えていると近くにあった扉が外側から叩かれる。
「悪魔、出なさい」
「なんでボクが」
「それだけ残機があるなら1体くらい減っても平気でしょ」
「ボク、キノコ食べても大きくならないですよ?」
ぼやきながら悪魔が扉を開けると隙間から吹雪が流れ込んでくる。
「な、なにか、食べ物を……」
悪魔は扉を閉めた。こういう時には躊躇が無い。
「悪魔違いだったようです」
『ねぇ!話が進みませんって!開けなさい!』
あー、アリとキリギリスかぁ。
「羊さん、元気じゃないですか。働かざる者食うべからずですよ」
『いきなり雪の中に放り出された私を見捨てるのですか!』
「前にこのパターンだった時にボクが溺れたの忘れてないですー」
さすがにそれじゃ冷たくなるか。
『ミミ君!情けは人の為ならず!』
「ボク、ヒトじゃないので」
今回は平和に過ごせそうね。
『ニンゲンさんが居たのも見えましたよ!さぁ、日ごろの感謝をこめて』
「この前貸した3,000円、今返せる?」
『この状況で督促!?』
面倒だからテキトー言ってるだけだけどね。
「いやぁ、こんな暖かい部屋で食べるチキンは美味しいですー」
追い打ちかけるなぁ、悪魔。
「大変です、ボク!チキンがもうありません!」
言葉を受けて、くるりと扉の方を向く悪魔たち。
「羊さん、仕方ないですねぇ。中にどうぞー」
やめなさい、お腹壊すわよ。
扉に悪魔がにじり寄る。
キリギリス、食べられるって解釈もあるの思い出したわ。




