悪魔がウチにおりまして・81
あの、ハードスケジュール過ぎませんか?
3日で6つの裂け目を閉じたのだが6キロ体重が落ちるとは思いませんでした。
何なら羊がジャーキーみたいに干からびているし。
「羊、生きてるー?」
「ヤギでーす…」
良し、大丈夫。
「みんな体力ないなー。これくらい日常でしょうに」
「これを日常にしたくないから引きこもってたのに…」
おっと、コレは失言。
うぱがアニメみたいにアゴ外してるし。
「ニンゲンマーク2、まだ終わらないのですか?」
悪魔、最近怖いもの知らず過ぎるでしょ。
「次で終わりだよ。アンタらの領域に少し干渉するけどね」
「それは聞き捨てならんな」
気配なく舞い降りたのは天使…いや、天使よ、今来るかね。
「今の今までだんまりだったのに『お早い』お着きで」
「絡むな、御使い。悪魔の領域干渉だと?破ってはいけない理があるだろう」
いつも不機嫌な天使だが尚のこと機嫌が悪い。
「そう言いなさんな。閉じられるのがこの子だけ、最後の裂け目があっちにある。不可抗力ってものでしょう」
「誰の許可で入るつもりだ?そいつ程度の権限で入れるものではないだ…生きているか?」
羊の干からび加減を見てじんわり汗を滲ませる天使。
ここまで消耗するのはレアなのね。
「ボクの許可なら良いのかい?」
アンタも気配くらい滲ませなさい。
シレっと歯医者が一団の最後尾に紛れていたことに「誰も」気付かなかった。
「…人の仔、お前は本当に人なのか?」
「最近自分でも疑ってる」
お姉の無表情を見たら、この歯医者の立場っていうのも想像に難くない。
なんなら堕天って呼ばれている時点でなんとなく察していたけど。
「はいコレ通行手形と、‘大罪‘許可書。あっちで使えるクーポン券も用意できればいい観光になったと思うんだけど」
…声だけでは判断しにくいけど絶対滞在って言ってない。
気にしたら負けだ。
「ずいぶんと気前がいいじゃない、大天使さま」
「イヤミとはご挨拶だなぁ。ちゃんとキミたちに必要なものは用意してあげたのに」
「アンタが処理してくれてもいいじゃない」
お姉の悪態に、歯医者は目を細める。
「自らの不始末を漱ぐ機会を与えたまで。ボクがやっても構わないけど?」
やっべいくらいの威圧感。
羊がボケるのを諦めて水分補給している。
キモが細いのか太いのか、わかりゃしない。
…どうやら話は続くようで。
ついに、悪魔の世界に足を踏み入れることになりそうね。
 




