悪魔がウチにおりまして・826
ウチには悪魔がいる。
もじもじと目を合わせない悪魔が。
悪魔がこういうことをしているとき、何か私に隠し事をしている。
具体的には何か飼いたいときタイミングを図っているのだ。
以前クモや毛玉を連れて来たとき、こんな目をしていた。
「捨ててらっしゃい」
これ以上ウチは抱え込む余裕はありません。
「まだ何も言ってません!これから言うんです!」
結局言うのですね、シバきます。
ほら、心配してクモが見下ろしてるじゃない。
「別にウチにいる子が増えるわけじゃ無いです。いや増えるんですけど」
どっち?嫌な予感しかしませんけど。
「昨日、ピザ頼んだじゃないですか。余ってぱさちゃんと食べたんですね」
次からひとりで食べ切れる量頼みなさいね。
「で、ぱさちゃん増えまして」
「どれくらい?」
「たくさん」
悪魔が自分の部屋を指さす。……開けろと?
クモと一緒に部屋の前。クモを抱えてノブを下ろさせる。
扉が開くと白い壁、毛の壁。
「……はい?」
クモを近づけて突かせるとぽろぽろ崩れ落ちる。
『つれてくー』
1つ1つから声が聞こえる。
「悪魔、これはなんですか?」
聞くまでもないんだけど、念のために確認しないといけません、礼儀です。
「増えました」
「この子燃料にならない?」
いまガソリン高いし。
「ニンゲン、発想がやべぇです」
せっかくなら有効活用しないとじゃない?
『つれてくー』
冗談だから、潤んだ目をこっちに向けないでよ。
「ねぇ、毛玉。元に戻れないの?」
『もどれるー』
喋ったぁ!?
「ニンゲン、元々喋ってます」
いらんのよ、そのツッコミ!
「戻れるなら、戻ろ?そうしたら平和で悪魔を追い出す必要ないし」
「ニンゲン!?ボク追放される予定でした!?」
……勇者の代わりに悪魔が追放される物語も面白そうね。
「つれてくー」
気が付いたら普段通りの毛玉に戻って……普段通りの毛玉ってなんだよ。
「ぱさちゃん!ピザ禁止です、いいですねっ!」
青ざめた悪魔が念を押すのでした。
ウチには毛玉がいる。
ジト目で悪魔を見ている毛玉が。




