悪魔がウチにおりまして・810
ウチには悪魔がいる。
玄関に松飾を掛けている悪魔が。
「ミミ殿、傾いてます」
「良いじゃないですか、ごんちゃん」
扉の外から騒がしい声がする。
「ミミ殿、傾いてます」
「さてこれでお昼ご飯です……」
べこんっ!
「ミミちゃん、傾いてます」
「ふ、ふぁい……」
今日は直接殴ったか。
「ほら、悪魔ー。狐ちゃんの言う通りまっすぐにしてねー」
「まったく、ミミ殿に任せるとずぼらなのですから」
すぐに玄関の扉が開いて狐と、大きなコブを作った悪魔が戻ってくる。
「ねぇ、ごんちゃん。頭殴ったらまっすぐにできるものもできないと思うのですよ」
確かに……でもそんな強く殴ったわけ?
「その後1回でまっすぐになったので。これから曲がってたら殴りましょう」
「最近、手が早いです……」
悪魔が俯きながらマグカップを持ってくる。
「ミミ殿には身体で覚えてもらったほうが早い気がちてます。この忙ちい師走、誰でもできることは1回でやってもらわないと」
1,000年単位で付き合いあって今気付くことなのか。
「ニンゲン!フォローするです!」
……えー、何かできる理由あるかな?
「ほら、今日自分から飾り付け手伝ってくれたし」
「本当は昨日やるつもりでしたけどー。ごんちゃんがお酒持ってきてくれたのでー」
その言葉を聞き狐は大きくため息を吐く。
「どうしたの?」
「まったく……たまたま持って来たからよかったものの」
「さぁ、大掃除をしないとですー!」
待てい。その慌て方はおかしいだろ。
「悪魔、なんで逃げようとするのかな?かな?」
「ニンゲン、首痒くないです?ぼたもち食べます?」
拾うな、恥ずかしい。
「ニンゲン殿、昨日は何日ですか?」
「29でしょ?」
……そういうことか。
「お気付きになられまちたか。9の付く日に、わざと新年の飾り付けをちようとしたのです、ミミちゃんは」
「出来心、出来心ですー!」
ギルティでーす。脚を掴んで逆さ吊りの刑に処す。
「お酒、母上から頂けてよかったです」
「堪忍をー、堪忍をー」
「お酒って、本当に魔除けになるのね」
悪魔と狐が手を打つ。恥ずかしいから辞めて。
ウチには悪魔がいる。
「ところで昨日のお酒は残ってるですー?」
逆さのままで酒をせびるんじゃない。




