悪魔がウチにおりまして・805
ウチには悪魔がいる。
サンタのコスプレを脱いでいる悪魔が。
クリスマスイブの夜も明け、朝もはよからなんでそんな恰好しているんだろう?
「悪魔、その格好どうしたの?」
「ニンゲン、プレゼント配ってたに決まってるじゃないですかー」
アンタが?
「サンタさんの邪魔してない?」
悪魔がいる世界だ、サンタがいたとしても不思議じゃない。
それにコイツならそのサンタと知り合いであっても……。
「大丈夫ですー、ちゃんとタイミングをズラしましたので」
逃げ惑うコソ泥みたいな行動でしたね。
「アンタまでプレゼント配ったらふたつになっちゃうでしょ」
まさかそのプレゼント盗んで来てはないと信じたい。
「プレゼントなんていくつあっても良いじゃないですかー。だからちゃんと忍ばせてきたのです」
……ちょっと怪しい。
「何を忍ばせてきたの?」
「鶏肉です」
トンデモねぇな!?
「アンタ、まさかとは思うけど生肉置いてきたの?」
悪魔は鼻で笑う。
「ニンゲン、いくら冬と言えど生肉を剥き出しで置いておいて良いわけないじゃないですか」
この文脈にわざわざ剥き出しと加えた時点で怪しさしかございませんことよ?
「焼いたの?」
「あい」
「剥き出し?」
「あい」
「どこに」
「靴下です」
テロだよ!?
「靴下、脂ギットギトになるでしょう!」
悪魔はゆっくりと指を振った。
「ニンゲン、太ももは靴下に収まるものですよ」
上手いこと言うんじゃない!
『続いてのニュースです。今日未明、日本の各地で靴下の中に鶏肉が入れられる事件が発生しております。チキンは温かいままであり、近くに犯人は居るものの思われ、同時多発的事件として警察は頭を』
テレビを消す悪魔。大事になってるじゃない!
「さぁ、さわやかな朝ですねっ」
「ウチにテレビは無いわよ!」
こんなツッコミのためにテレビまで仕込むんじゃないよ!
「ニンゲン、ボクは大変だったのですよ」
「なにがっ!」
「温かいまま靴下詰めするのぐはぁ!?」
謝ってこい、すぐ!!
ウチには悪魔がいる。
午後には謝罪文の配達を終えた悪魔が。




