悪魔がウチにおりまして・793
ウチには悪魔がいる。
鍋でイモを煮ている悪魔が。
「ニンゲンー、お水足してくださいー」
悪魔が再び私にお手伝いを指示、すでに3回目である。
煮ているイモは既にペースト状になり、トロトロ。
足している水は味付けというよりも焦がさないためなのだろう。
「ところでなに作ってるの?」
「これは……」
「イモ羊かんです」
背後からモグラの声、振り向くと泥を落としたサツマイモをカゴ一杯に入れていた。
「ぽんちゃんー、追加ありがとですー」
「ミミちゃん、どうでも良いのですが、なぜいきなりイモをしだくのに目覚めたので?」
何よ、しだくって。
「イモ羊かんは携帯に便利なのです、しっかり塩を効かせればひと冬保存ができるらしいのです!」
悪魔さん、2024年にもなったら保存食はいらないのよ?
「ミミちゃん、今は令和も6年ですよ?もし令和ちゃんが居るのだとしたら小学校に上がる歳。それにも関わらずこんな気温の運用の仕方は納得できない!」
モグラ、まな板に乗せたイモを叩き切る。
途中から話変わってますよ。
「ニンゲンさん、気温の安定は農業の基本。最近の乱高下はシャレになってません」
それはそうだし、気になることだけど。
「あっちも気温変なの?」
「いえ、次元が違うので実に穏やかです」
共感した私の気持ち、返しなさい。
「そうは言ってもニンゲン、こっちがバタつけば出荷が読めなくてバタつくのです」
そっか、私たちの体調で変わるものね……って納得はしませんよ。
「それはまぁ飲みましょう、大人ですから」
「ニンゲン、大人だったらそうは言い……なんでもありません」
悪魔はいそいそ鍋を混ぜ始める。
「アンタよ、その気温が乱れていることとイモを羊かんってることには関係ないでしょう」
「ニンゲン甘い!この羊かんより甘い!」
匙をずびしと突きつける。
先端に付いていたイモペーストを掬って舐めてみる。
「悪魔、塩入れ過ぎて少ししょっぱい」
「え?ホントですね……うぱちゃん、お砂糖ー」
ただのイモ羊かんにうぱの砂糖入れたら、そりゃ保存効くでしょう。
悪魔に呼ばれたうぱ、クモを抱えながらご到着。
遊んでいたみたいでおかんむりです。
「ごめんなのですー、うぱちゃんも甘い方が良いでしょ?」
うぱ、仰け反る。なんでやり込められてるのよ。
しぶしぶペースト芋に砂糖を振るうぱ。
「ニンゲン、これなら10年戦えます!」
……食べようよ、すぐ作れるんだし。
ウチには悪魔がいる。
……ところでまだ芋が山ほどあるのですが?




