悪魔がウチにおりまして・76
ウチにはクモがいる。
こう見えて徳の高いクモが。
「行ってきますのです」
狐がぺこりと頭を下げて玄関から出ていく。
最近狐もよく出かける。
さて。
悪魔も畳に潜っていたのでウチにはクモと私しか…あとうぱも居ましたね。
手を振りながら宙返りしているので忘れられることに気付いたのだろう。
ちゃんと覚えてますよー。
そんな中、クモが壁伝いに降りてくる。
そういえば、クモはうぱ否定派だったのだが最近はどうなのだろう。
「ねぇ、クモ。最近うぱには慣れたの?」
話しかけられるとぴたりと止まってアゴに脚をやりながら考えている。
うぱが宙返りしている様をじっと見ている。
クモの目線に気付いたのか、うぱは手を振る勢いが上がっていく。
手、取れそうですけどね。
クモ目を細めてじっと見ている。
おぉ、反応薄い。
うぱが焦れたのかクモに向かって突撃してくるもくるりと身を返して避ける。
うぱ、畳の中に吸い込まれていく。
基本触れることはできないからね…って。
「クモ、見えるようになったの?」
以前までビビっていたのは目に見えないからだったはずなのに。
私の言葉にクモは顔をこちらに向け、目を細めたまま片唇を上げる。
ニヒルなんだよなぁ…。
そしてクモの表情読めるようになった自分に対してその表情したいわい。
クモ曰く。
いきなり見えるようになった。
見えてしまうのであれば気にしても仕方ない。
ていうか、何だこれは。
力のパイプが太すぎる。
なんでこのレベルの生き物が感知されないのだ。
などどおっしゃっており、この情報をやり取りするのに3時間かかったところで諦めた。
途中うぱがクレヨン描きの絵でお茶濁してくるし。
「ともかく、この子の事怖がらないようになって良かったよ」
クモの頭を撫でていると隣にうぱも寝転んでくる。
仕方ないと2匹を撫でていると羊が畳から生えてくる。
「私は認めませんからね…」
それだけ言うと畳の中に沈んでいった。
…実は見えてる?
ウチにはクモがいる。
ちょっぴり成長した、クモが。
 




