悪魔がウチにおりまして・771
ウチには悪魔がいる。
ペットボトルでジャグリングしている悪魔が。
リビングで器用に、3本のペットボトルを回転させている。
「上手、上手」
3本とは言え、私にはできない。
素直に悪魔を誉めると頭を掻きながら照れた顔。
「でしょー?」
その光景を見て褒めたことを後悔。
だってペットボトル浮いているんですもの。
「インチキじゃない」
「その言い方嫌ですー、せめてトリックと言ってくださいー」
どっちゃでも同じでしょうに。
「アンタ、物浮かせられたんだ?」
コイツの特殊能力、時々幅広過ぎてわけわからないよね。
「チョトデキルです」
「それは万全のスラングなのよ」
絶対知ってて言ってる。
「実際ほんの少しなので役に立たないのですー、ほら」
私と話している間にペットボトルは次々に落ちて行く。
時間にして2.3秒といったところか。
「確かに短いのね。でもならなんで練習してるの?」
物を宙に浮かせられるなら練習なんかしなくてもいいでしょうに。
「ほら、そろそろ年末、忘年会の準備です」
「やめなさいっ!」
悪魔がビクッと飛び跳ねる。
仕方ありません、もう年末が近いというと傷付く人がいるのだから!
「ニンゲン、もう気にする年齢では」
あれぇ?悪魔が壁にめり込んでるぞぉ?
「ニンゲン殿、お代は家賃から」
「悪魔から引ける?」
「それはちません」
さすがに甘かったか。
「ニンゲン!グーはアカンです!」
壁にめり込んだことは良いんだ?
「そういえば某も忘年会の準備をせねば」
狐ちゃんが忘年会そんなに気にするの意外。
「ごんちゃんは毎年芸が凝っているのですー」
狐が芸にこだわっていることより毎年狐の忘年会に顔出していることの方が驚きなんだけど。
「ミミ殿は毎年平然と。なぜか毎年断られながら来年も招待されているのです」
悪魔じゃなくてぬらりひょんなんじゃないの、この子。
「みんないい子いい子してくれるのですー。ごんちゃんママさんもいつもお茶漬けをー」
……どっちの意味なんだろ?
「言ってもかかさま追い返さないので気にちてないのでしょう」
子どもの幼馴染だからいいのかもね。
ウチにはぬらりひょんがいる。
「6つまで頑張ってみますー」
おぉ、浮かしてるのを隠す気がない。




