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悪魔がウチにおりまして・762

悪魔がウチにおりまして・762


ウチには悪魔がいる。

地に足の着いていない悪魔が。


「ニンゲンー、大変ですー」

休日の昼下がり、コーヒーを飲んでいると悪魔が情けない声を出す。

「どうしたのよー」

「地に足が着かないのですー」

振り返ってみると悪魔は確かに地に足が着いていない。

具体的に15センチくらい浮いている。

「いつの通りじゃない」

「せめて驚けー」

ツッコミの緩さを考えると、本人も余裕があるみたい。

悪魔は体操で浮くことができるけど今は本人の意思じゃないみたい。

「ところでアンタを示すとき『本人』で良いのかな?」

「どっちゃでもええです」

あら、不機嫌。

「ボクはこう見えて困ってます」

「私に解決できなくない?」

「確かに!」

確かにじゃないのよ。

「最近アンタ伸びたり飛んだり燻されたり忙しいわねぇ」

「最後、無い記憶なんですけど」

アレ?燻製の悪魔を水で戻さなかったっけ?

「ニンゲン、疲れてますね。休んだ方が良いですー」

飛んで不安定なアンタに心配されるの、どっちもどっちなのよ。

「とりあえず、たくさん物を食べて着陸できるか試すです」

悪魔はキッチンに向かう。

すぐ戻ってきて、口にはホースを咥えている。

「ぱさちゃん、オッケーですー」

「連れてくー」

キッチンから返事が届くとホースから噴水している。

「掃除は浮いててもできるよねー」

確かに水飲む方が早いもんね。

「ぱさちゃんー!止めるです、強いですー!」

びしょびしょになる悪魔の姿をひょっこり毛玉が覗いて、慌てて戻る。

「毛玉、意外と馴染んで来たわね」

「ぱさちゃん、頭良いですよ。時々仕事を……おっと」

慌てて口を塞ぐ悪魔。そして口の中に手を突っ込む。

「汚いことしないの」

手を口から戻す悪魔、するとその手には手を繋いだたくさんの毛玉。

「……グロ映像じゃない」

口の中から毛玉たちを取り出すと悪魔はゆっくりと床に足を下ろす。

「いつの間に口に入ったですー?大変でしたよー?」

悪魔が叱ると中に入っていた毛玉たちはぺこりと頭を下げる。

「連れてくー」

「なに?かくれんぼしてたです?溶けちゃったらどうするですー。え?そのために浮いてた?」

聞けば聞くほどとんでもない毛玉だったのね。

……いや、飛んでたのか。


ウチには毛玉がいる。

「ニンゲンも飛んでみますー?」

絶対にイヤです!

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