悪魔がウチにおりまして・761
ウチには悪魔がいる。
ウチっていうか庭なんだけどね。
「本日はお日柄もよくー」
「さっさと肉食わせろですー」
モグラが挨拶をしている最中、悪魔が欲望をぶちまける。
「今の発言のせいでミミちゃんの肉が減りました」
「やだー!」
なら黙ってなさいよ。
狐ビル庭先、メラメラと燃え盛る炎の上には網が置かれている。
焚火って、確か許可制じゃなかった?
「この地は我が領土、ニンゲン族の指示など受けません」
ちょっとこじれた狐の発言は無視とする。
「今日の食材を提供ちてくれたぽんちゃんに拍手!」
狐の号令と共にまばらな拍手が響く。
メンバーは悪魔、クモ、羊、神ちゃん、牛、ザリガニ、担当、歯医者……歯医者!?
「なんであなたシレっといるんです?」
「えー?僕がお肉食べても構わないでしょう?」
いい笑顔で言われた。
「悪魔、天敵いるのは良いの?」
「ニンゲン、こっちの世界には寒いのに蜃気楼が出るのですね。そこら辺が歪んで何も見えません」
悪魔が円を描くように歯医者のいるあたりをぐるぐると。
肉の前では妥協したってことね。
「あのー、こんな場所に私がお呼ばれしていいんです?あっきらかに身内会じゃないですかー」
……担当がまともなことを!?
「良いのです。我が家にはお肉を皆で分け合うと恩着せられるという家訓があります。担当、美味しく食べて出版の際には是非」
モグラ、真顔でぶっちゃけた。
「私にそんな力ないと思いますけどねー。美味しい物ならいただきますが」
「人の仔ー、このあからさまに邪悪な人の仔とあからさまに擬態してる悪魔っていていいのー?」
神ちゃん、歯に衣着せて!
「すーさん!この邪悪は私の仕事の担当、そしてこの悪魔はる」
「キミも悪魔だよね?確か……日田つつじ、さん?」
「歯医者です!この方はただの歯医者です!」
その怯えっぷりでただの歯医者は無茶だろうよ。
「まぁ私たちの系譜ではないみたいだからいっか。あなた、肉だけじゃなく野菜も食べるのよー」
イチャ付くな、異種夫婦。
「……顔が広いと思ってたけど、まさか神族とも繋がってたとは」
「まぁ繋がってるのは悪魔でしたけど」
呆れ顔の歯医者に問われてため息を吐く。
「私はごくごく普通の一般人ですけどね」
「いやぁ、お肉美味しいなぁ」
聞けよ!!
焼肉パーティは間もなく終わる。
「ねぇ!私も誘ってくれても良いんじゃないのー!?」
……お姉、こんな出オチさせられて可哀そうに……。
お姉、覚えてる人います?




