悪魔がウチにおりまして・760
ウチには悪魔が……。
なんか長くない?
朝起きてリビングに行くと悪魔が寝ていた。
それだけならいつものことだけど、妙に長い。
「ニンゲンどうしました?」
「そっくり返すんだけど、どうしたの?」
悪魔はでろーんという擬音と共に転がり振り向く。
「朝起きたら伸びててー。立ち上がれないので横になってます」
そんなに全長伸びててのんびりしていていいわけ?
身長ではなく全長と言いたくなるレベルの長さになっている。
「ニンゲン殿、巻き尺で測ります?」
「測ってみるかぁ」
準備のいい狐から巻き尺を受け取り、悪魔の脇に当てる。
「セクハラですー、モラハラですー」
セクシャリティもモラルも侵害してません。
グネグネと動く悪魔を椅子で引っ張り伸ばし、長さを測る。
「3.5メートル……3.5メートル!?」
予想より伸びている、質量保存はどうなってんだ。
「これだけ長ければ1メートルくらい切っても良いのかな?」
「ニンゲン!?シレっと刺身にするつもりですか!?」
こんなに美味しくなさそうな刺身はいりません。
「ところで悪魔、なんでこんなに伸びてるの?」
「春だからじゃないですか?」
季節は守りなさい、冬になったばかりでしょう。
「これってミミ殿本体ですか?」
狐は虫眼鏡をかざして調べる。
「なに、その虫眼鏡」
「やめてーやめてー」
引き延ばした悪魔はとぐろを巻いて尻尾の先をふりふりする。
「これはラーの虫眼鏡、かざちた者の本来の姿をあぶるのです!」
室内で焼くな、困るのはアンタだろうに。
「類似品に鏡が」
「ストップです、狐ちゃん」
大手にケンカを売るのはいけません。
「うむ、どうやらこの伸びたミミ殿は本体のようです」
虫眼鏡をかざした結果、これが悪魔なことは間違いないとのこと。
「逆に問題じゃない?」
「辱められたですー、お嫁に行けないですー」
「時々思うけど、アンタの性別どっちなのよ」
そもそも悪魔に性別ってあるのかしら?
「ボクは……です」
聞こえるように言いなさい。
「ニンゲン殿、それはセンシティブなので控えましょう」
裾を引っ張る狐、そういえばこの子もわからん。
「呼ばれてなくてもじゃじゃじゃじゃーん」
……うん、許しましょう。最近、牛の出番無かったし。
「悪魔族に性別付けるといろいろとしち面倒なことになるんで。ここは、ここはー」
牛が平伏しながら祈りを捧げる。……馬鹿にしてるでしょ、アンタ。
ウチには悪魔がいる。
「ところで伸びてるのは?」
「知らんです、ミミさんバグってるので」




