悪魔がウチにおりまして・751
ウチには悪魔がいる。
壁に向かってピーナッツを投げ続けている悪魔が。
怖い、ひたすらに怖い。
だって壁にダーツの的のような物を置いてひたすらにピーナッツ投げているのよ?
ひたすらというのは語弊があった。
投げたピーナッツを拾い、食べた後に再び追加して的を狙う。
もう1度言おう、ひたすらに怖い。
「あれ、ニンゲン。何を見ているです?」
「あぁ、ちょっとね」
今日の悪魔は一味違う、もちろんヤバイ意味で。
「ニンゲンもやります?ピーナッツダーツ」
ネーミングはド直球。
「食べ物で遊んじゃダメでしょ」
「遊んだ後、ちゃんと食べてるです。ほらビニールも敷いてます」
衛生面は気にするんだ。
「じゃなくて。なんで的当てしてるのよ」
悪魔はじっとこちらを見ている。
「何?」
「ピーナッツダーツだもん……」
悪魔は目を涙で滲ませ、俯いてしまう。
……コレ、本当に悪魔か?
「羊ー、いるー?」
「呼ばれてくると思ったら大間違いです!」
「やっほー、人の仔ー」
呼んだの、羊だけなんだけど厄介な神ちゃんが付いて来た。
「ちなみにさっきまで一緒にランチしてたので、事と次第では人類滅ぼします」
あまりにも過激で風邪引きそうなんだけど。
「それなら帰っていいよー、皆さんによろしくー」
「しゃー!」
今日は神ちゃんもおかしいんですが!?
「ニンゲンさん、妻のことは気にせず。あなたが呼ぶなんて珍しいじゃないですか」
羊は神ちゃんをなだめながら目線をこっちに。
普段、家でこんな感じなのかなぁ。
「悪魔がおかしい」
「ヤギさんだー、すーちゃんも一緒にいるー」
「おかしいですね」「おかしいわね」
良かった、人類は生き延びた気がする。
「なんか、さっきまで泣いてたのよ」
「泣いて無いもん、ボク強いもん!」
潤んだ目でぽかぽか殴ってくる悪魔。本当にどうした?
「あー、コレはあれですね」「あれね」
それをふたりで納得するんじゃないよ。
「ニンゲンさん、昨日ミミ君は何を食べました?」
「コレ、食あたりか何かなの!?」
羊はゆっくり首を振った。
「いえ、実はですね……」
ウチには悪魔がいる。
再びピーナッツを的に当て始めた悪魔が。




