悪魔がウチにおりまして・746
ウチには悪魔がいる。
オレンジのかぼちゃをくり抜いている悪魔が。
「真っ赤なおーはーなーのー」
早い早い。なんならアンタ、ハロウィンの準備してるじゃない。
「ニンゲン、これはカリフラワーです」
……………………カムフラージュか!
脈絡が無さすぎて思いつかなかった。
「誰に誤魔化すのよ」
ここには私とアンタしかいないでしょ。
「ニンゲン、障子にマリーです。大きな声を出さないように」
せめてメアリーと言いなさい。
「かぼちゃをくり抜いているだけ」
「かぼちゃを、ですって?」
バタンと大きい音を立ててモグラが入ってくる。
「ニンゲン!逃げるです!」
「逃がしません」
モグラが手を叩くと扉がバタバタと閉まっていく。
妙な能力を発揮するんじゃない。
「あ、開かないです!ニンゲン解呪を!」
できるか、そんなもん。
「ミミちゃん、また食べ物を無駄にしてますね?」
あー、なるほどね。
「無駄じゃないのです!中身はちゃんとポタージュにするです、ニンゲンが!」
聞いてないけど頷いておく。今回はたぶんヤバいから。
「そういう問題ではありません、かぼちゃはすべて食べられる野菜。皮も栄養があるのです、それをいたずらに傷付け、見せ物にして捨てると?よろしい、そこに直りなさい」
モグラは自分の身長より大きな刀を抜き、悪魔に突きつける。
なんでこうウチの生き物たちは銃刀法の概念がないのか。
「ぽんちゃん!コレは皮は食べられない種類です!」
へぇ、そんな種類のかぼちゃなんてあるんだ。
「ウソおっしゃい。素直に謝れば首だけで許したものを……」
ゆらりと、モグラが刀を光らせた。
「ウソじゃないです!それならぽんちゃん、食べてみろです!」
悪魔は切り出したかぼちゃの皮をモグラに差し出す。
「まったく、ミミちゃんがそこまで言うなマズいん」
言葉の途中だよ!?
「それ見たことかです!だから言ったじゃないですか!」
「……信じられません。なんで?かぼちゃの皮、ここまで美味しくないの、なんで?」
生だからじゃないの?
「えー、無理ー。今までの常識、無理ー」
モグラに変なスイッチが入ったけど!?
「ほら、ぽんちゃん食べろです!無駄にするなです!」
その後しばらく悪魔がぐりぐりと皮をモグラにねじ付けるのだった。
ウチにはモグラがいる。
「……田楽にしてもマズいん……」
律儀に全部食べ切ったモグラが。
有言実行、偉い。




