悪魔がウチにおりまして・745
ウチには悪魔がいる。
ホイッスルを軽快に鳴らしている悪魔が。
「ぜんたーい、とまれっ!」
『連れてくー』
悪魔の号令と共に毛玉が止まる。
普段と変わり映えの無い日常。
これが変わりなくなってしまった恐怖。
そろそろ私は戻れなくなってしまうのかも知れない。
「ニンゲン、2年以上ボクと暮らしてて平常と思ってるのが異常です」
『連れてく』
悪魔のみならず、毛玉からもダメ出し!?
ていうか割と異常事態になってた。
「それはそうと……毛玉、多くない?」
ぱっと見て30は越える毛玉たち。
まるで絨毯のように四角く隊列して敷き詰められている。
「すごいでしょう?うぱちゃんの砂糖をあげたら増えたのです!」
『連れてくー!』
やかましい、喋るなら1体だけにしなさい!
「こうなってくるとうぱの砂糖の方が危険物質なんじゃない?」
「うぱっ!?」
ハチミツを壺ごといっていたうぱがびくっと飛び跳ねる。
「うぱちゃん!?そのハチミツ、羊さんが隠していたものですよ!どうやって見つけたです!?」
悪魔、代わりに弁償するように。
「ところでこの毛玉、増えるのね」
最初たしか1体しかいなかったはずなんだけど。
「この子たちだけじゃなくて、今はお外を見回りしてます」
……ほかの人に見えないのが幸いだよ。
「お散歩させると、何匹か減ってるんですけど。まぁ1週間もしたら泥だらけで帰ってくるので」
やんちゃなわんこか何かかな?
随分と手足が無いまんまる毛玉だけれども。
「増えることに疑問は」
「それを言い始めたらこの子が生きているところから疑問を抱かないといけない気がします」
やめなさい、正論で殴るのは!
「そんな訓練する必要はあるの?戦争でも始める気?」
やるならこっちの世界は巻き込まないで欲しいものだけど。
「戦争なんて危ないことはしませんよー、ねー?」
「連れてくー?」
……違ったのー?って楽しそうに言った。聞こえなかった。
うぱが寄ってきてハチミツを手づかみで渡してくる。
うん、気持ちだけにして……髪の毛に塗るなぁ!?
「うんうん、今日も平和なのですー」
平和という意味を辞書で引け!
ウチには毛玉がある。
「今日は公園でカラスさんと訓練ですー!」
いつの間にカラスと仲良くなっていたのだろうか?




