悪魔がウチにおりまして・743
ウチには悪魔がいる。
どんぶり飯をもりもり食べている悪魔が。
「ニンゲン!お替わり!」
「自分でよそいなさい」
お替わりなら自分、しかも5回目でしょ。
「ミミ君、久しぶりじゃないです?そんなにご飯を食べるのは」
羊が目の前にあるサンマに大根おろしを乗せて醤油を垂らす。
対する悪魔はサンマのかば焼き缶をご飯に乗せて平らげたところだ。
「毛を生やすにはたくさんのエネルギーが必要なのです!」
まだ腰の毛、生えてなかったの?
「そんな単純な身体で羨ましいですね」
羊がシレっとディスりながら大根おろしだけを口に運ぶ。
「羊さん!ボクは単純じゃありません!なので毛を食べずにお米を食べているのです!」
確か、毛って消化できないからお腹に溜まるんじゃなかった?
「それは失礼しました」
羊、慌てず騒がす大根をおろし始め……どんだけダイコン好きなのよ。
「それにしても新米になると美味しいですねぇ、ごはんが止まりません」
再びどんぶりメシを盛ってきた悪魔はホクホクとしながら煮汁の余った缶に米を入れている。
「ミミ君、その品の無い悪魔的食べ方は!」
この食べ方日本的だと思うけどなぁ。
「ふふん!おじょーひんな羊さんには真似できないでしょう!ニンゲンこんな画期的な食べ方、初めてでしょう!?」
「ねこまんまでしょ?」
その場合は味噌汁だったっけ?
でも似たような物でしょ。
「ね、ねこまんま……?そ、それはどんな食べ物です……?」
悪魔が目を丸くしている。
羊は気にしないようにしているけど聞き耳……というか角を外して興味津々。
「ご飯に味噌汁かけるだけ。まぁあまりお上品じゃないのはそうだけど」
悪魔は自分のどんぶりと味噌汁を何度か見返している。
「……ニンゲン、ねこまんま、食べたいです」
やればよろしいに。
「ミミ君!あなたはネコに……ネコに堕ちるというのですか!」
ふむふむ、悪魔族的にはネコは堕ちる側なのね。
「ボクも悔しい……でも!味の探求はアドベンチャーなのですー!」
悪魔は叫びながらどんぶりにワカメの味噌汁をかけるのだった。
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン、ネコになりたいです……」
これからネコって呼ぶ?




