悪魔がウチにおりまして・742
ウチには悪魔がいる。
毛玉に腰をふみふみされている悪魔が。
「あー、ぱさちゃん、そこそこ……気持ち良いのですー」
「連れてくー」
是非とも病院に連れてってもらいたいものである。
「なにか、イラっとする思考が流れてきた気がしますー」
そこまで読み解けるならちゃんと治療しなさい、医者嫌い。
「ところで毛玉に踏まれててちゃんとマッサージになるの?」
見た目こそ風が吹けば飛んでいきそうな毛玉、しかししっかりとマッサージ効果があるのであれば……。
「何を言ってるです、ニンゲン。重みなんてあるわけないじゃないですか」
毛玉、そいつを異界に連れてって!
「この前剃った毛のところがふわふわと気持ち良いのですー」
ならば、許そう。そなたの罪を。
「ニンゲン殿、お顔が閻魔様にそっくりです」
狐が鏡を向けてくる。
思わず拳が飛びそうになりました。
「そういえば狐ちゃん。この毛玉結局何なの?」
「連れてく?」
はーい、チョコ粉末あげるから大人しくしようねー。
「前も申ちた通り、わかりません。某とてすべてのことがわかるわけではございませんので」
私から毛玉を受け取るとじっと目を合わせ……なんで毛玉に目があるのだろうか。
「ニンゲン!毛布を……じゃなかった、ぱさちゃんを返すですー」
本音が駄々洩れの悪魔には返してあげません。
「それにちても見れば見るほど不思議です」
抱きかかえた毛玉をまじまじと眺める。
「そんなに?」
「ええ。この世のモノとは思えません」
「連れてくー」
それほどでもじゃないのよ。
「それを言ったら狐ちゃんとかもじゃない?」
「ニンゲンー地肌が寒いのですー」
情けない声出してるこのケモノもね。
「まぁそうなのですが。ただ、この子の場合この世の理に則ちていないような気がするのです」
怖いこと言わないでよ。
「ニンゲンー、毛布ー!ちべたいー!!」
手近にあった氷を背中に乗せたら本気で泣いている悪魔。
「なにもそこまでしなくても……動けないボクをなんだと思ってるです……」
悪魔だよ、ずっと認識変わってない。
「で、この毛玉って悪魔が拾ってきたんでしょ?なんなの。コレ」
コイツに聞くのが1番早い気がしてきた。
「わからんですー、ニンゲン嫌いで……ごめんなさい、本当にわからないです、うん」
氷第2弾でも言わないなら本当かぁ。
ウチには毛玉がいる。
「時々ニンゲン殿の方が邪悪に見えます」
キレた狐には及びませんよ。




