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悪魔がウチにおりまして・739

ウチには悪魔がいる。

「我、不動ですー……」

変になってしまった悪魔が。


悪魔が変なのは今さらかも知れないけど、座禅を組んでむにむにしているのはどうにも怖いというか何というか。

「ニンゲン、さわやかな日ごろ、どのように過ごしているでしょうか……」

「気持ち悪っ」

悪魔が穏やかであるだけでここまで嫌悪感が走るものとは思ってなかった。

「悪魔、どうしたの?牛から怪しい葉っぱでも吸わされた?」

「それいくら何でもあんまりでは?」

言ってるそばから牛が葉っぱを包みクルクルと巻いていく。

「ほらー、お手製のタバコ作ってー」

「この葉っぱはちゃんとこっちで買っている合法のもの、ニンゲンさんに文句言われる理由は無いですよー」

「どこの国で買ったの?」

「いやぁ良いのが手に入って嬉しいですねぇ」

答えなさい、国によって違法なんだから。

「おふたりとも、争いは醜いですよ……」

座禅を組んだままの悪魔はうっすら目を開けてこちらを見ている。

「牛、悪魔のことしばかない?」

「なんか負けた気がするので嫌です」

牛は不貞腐れたように再びタバコを巻き始めた。

「牛さんは長く生きていますのでやはり良識がございます。対してニンゲン。あなたはすぐに怒る、いたわしや」

ケンカ売ってるなら、買うわよー。

「それはそうと、いきなりなんでそんな修行めいたことを?」

この前やったでしょう、修行編みたいなの。

「ニンゲン、良いですか?生きていたら過ちは繰り返すものです。そのため、学ぶのは何度でも良い、何度でもいいのですよ」

うっすらしている微笑みが腹立たしいなぁ。

「ていっ」

足元に転がっていた消しゴムを何の気なしに放り投げる。

緩い放物線を描きながら悪魔の頬にぶつかった。

「みぎゅっ!?」

……効いたな、たかが緩く飛んだ消しゴムが。

「……ニンゲン、そのような無礼を働くと仏のボクもブチ切れて殴りますよ」

つまり、私の方には近付きたくないってことね?

「牛、捕縛!」

こっそり後ろに回っていた牛、悪魔を羽交い締め。

「ミミさん、諦めましょう。私でもわかりました」

「牛さんの裏切者!鬼!牛!」

そこは悪魔と言いなさいよ。

「はぁい、悪魔ー。お口あーん」

無理矢理お口を開くとしっかりと腫れている奥歯。

「歯医者に予約を入れないとね」

「みぎぃ!!!」


ウチには悪魔がいる。

歯医者へ連行が決定した悪魔が。

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