悪魔がウチにおりまして・72
ウチには悪魔がいる。
タイミングの読み方の上手い、悪魔たちが。
「おや、ずいぶんと物々しい時に来てしまった」
悪魔と協力して羊を火にあぶっているところに珍しい客が来た。
「ニンゲン、悪魔です!滅ぼすべき悪魔なのです!」
アンタも悪魔でしょうに。
殺気立っている悪魔をなだめつつ、いきなり訪ねてきた悪魔、歯医者を迎える。
「えっと、堕天さんだっけ?」
「その方がわかりやすいから良いけど、好ましい表現ではないかなー」
「助けてください、る…」
「それを言ったら、今すぐにこんがり焼くよ、ヤギさん」
おそらく名前を言いかけた羊の言葉を止める堕天さん。
一気に小さくなっているが、とりあえず放置。
「ところでなんでヤギさんが食材になりかけているの?」
「それはですね…」
悪魔、説明…終了!
「なんだー、それはヤギさんが悪いねー。大丈夫、美味しく浄化されてね」
「みー!?」
鳴き声がキャラ崩壊していますがな。
「ところで、なんでいらしたんですか?正体隠したいならウチに来なくても」
「いやねぇ。和久井さんの説明でわかったから良いんだけど。ほら、さっき異界突破した者の気配があったから」
「ご迷惑を…」
思い当たるフシしかないので頭を下げる。
「そうは言っても身内の不始末に巻き込んだだけだからねー」
それはごもっともですが、罪悪感というモノもあるでしょうに。
「気が晴れるならいくらでも焼いておいて、それじゃ」
「みー!?」
羊の悲鳴、再び。
まぁ、お仕置きはこれくらいにしてそろそろ解放してあげましょう。
「生きた心地がしませんでした…」
「いや、ツボの中に居た私たちのセリフなんだけど」
「それもそうなのですが。あの方の機嫌を損ねたらひとたまりもありません」
汗をフキフキ言っている様子を見ると、とてもそんな危機感ないんだけどなー。
「ニンゲン、世の中には逆らってはいけない相手という者がいます。彼はその筆頭でしょう。障らぬなんとやらに祟りなし、かかわり方はおう?」
「アンタが!ツボに!入れたせいでしょうが!」
せっかく解放された羊は再びす巻きにされるのでした。
ウチにはケバブがある。
さっきからしくしくと泣いている、ケバブが。




