悪魔がウチにおりまして・738
ウチにはクモが……。
そういえば最近見ないわね。
悪魔が拾ってきた巨大クモ、体長1メートルを越えているんだけど性格は穏やか。
なんなら1番常識がある気がする、狐を含めて。
だけど最近クモを見ていない。
ご飯の時とかもいない気がする。
「ねぇ、コモンず。クモは?」
天井近い位置に作られた無駄に豪華なクモの巣、通称ロフトから4つの顔が出てくる。
クモの分身か、子どもなのかは知らないけどとにかくちっちゃい……クモよりはちっちゃいクモ。
その子たちがわらわらと降りてくる。
……50センチは越えてそうなんだよな、怖くて測ってないけど。
そういえばこの子たちと話す方法無かった。
「悪魔ー、通訳ー」
クモを拾ってきた、つまり話ができる悪魔ならこの子たちとも話せるでしょう。
「なんですー?アレみんなどうしたです?」
降りてきているコモンずを撫でる悪魔。
「最近クモ見ないから。この子たちなら知ってるかなって」
「聞いてみました?」
それができないから通訳してって言ってるのに。
「あいー、ふむふむ。クモちゃんは武者修行に行ってる?隠ぺい術を使ってたから気付かなかった?そういえば、クモちゃんどこです?」
だから探していると言ってるでしょう。
そんな話をしていた時に玄関のドアを開けてクモが帰ってくる。
コモンず、跳ねながらお出迎え。
「クモ、ダメでしょ。出かけるなら言っていかないと」
「ニンゲン、気付いてませんでした」
アンタもでしょ、チクるんじゃないよ。
クモはフリップ書き書き「ごめん」と一言。
「ふむ。『ボクは強い相手と戦ってくる』?どこの戦闘民族です?」
その目的と反応よ。
「隠ぺい術って?」
私が尋ねるとごにょごにょと悪魔に伝えている。
「最近物騒だから身を隠す修行も兼ねていたそうですー。ニンゲンも覚えるか聞いてますけど」
念のため言いますけど私、人間なんですけど?
「大丈夫ですー、誰でもできて、奇襲をかけるのに最適だって言ってますー」
1番まともと言ったことを取り下げないといけないかもね。
ウチには……消えた!?
「ふっふっふ、ニンゲン。これならどこにいるかみきゅっ」
悲鳴を上げる悪魔がいる。
見えなくなるだけで消えるわけじゃ無いのね。




