悪魔がウチにおりまして・734
ウチには悪魔がいる。
二日酔いででるでるな悪魔が。
「……アンタ、悪魔よね?」
「ニンゲン……お水ー……ボクはもうダメなのですー……」
リビングのテーブルに突っ伏して手を伸ばしている悪魔。
何?取ってこいと?
「ボクは苦しいのですー、労われー」
顔も上げずにお口が悪くなる。
「えっと、トンカチはっと」
「ニンゲンさん、鬼ですか?」
のほほんとしていた羊が遠慮なく引いている。
「それならあなたが取りなさい」
私はポテチ食べるので忙しいのです。
「それを俗にヒマと言います。仕方ありませんねぇ」
羊がキッチンに向かっていく。
「ヒトでなしー」
助けなかっただけでそこまで言うのか、この子は。
「昨日、飲みすぎるなって言ったでしょうよ」
「飲み過ぎですかねぇ……」
昨晩、酒を大量に買い込んできたのは見てた。
それをどれくらい飲んだのかしら?
「えっとー、ワインとビールとハイボールと焼酎だけですー」
ちゃんぽんって悪酔いするって本当なんだね。
「ほら、ミミ君。迎え日本酒です」
羊がトドメを刺しに来た!
「ありがとうですー……これは、六海山!」
二日酔いで利き酒をするんじゃない。
「ミミ君、やっぱりまだまだですね。それ水です」
お酒と水を間違えるくらい深刻ってことなんじゃないの?
「あーうー。もう寝るですー」
のそのそと部屋に戻っていく悪魔。
「ペットボトル持っていきなさいー」
一応声をかけたんだけど聞こえているのだろうか。
「あの子があんな酔っぱらうのって珍しいわね」
「最近悩んでいるみたいで」
……悪魔って悩むの?
「なんか失礼なこと考えてそうな顔してますけど。私たちも生きてるんですからね」
知ってはいるけど。
あの子の性格上そんなお酒に逃げるほどの悩みがあるとは思わないじゃない。
「ああ見えて責任が大きいですからね。特に今は新人が生意気になってくる時期。上司は辛いですね」
羊が遠い目をしてるー。
「ねぇ、羊。悪魔ってコロッケ好きだったっけ?」
「……好きだと思いますよ、きっと」
……羊がにっこり微笑んでいるのが気に食わないけど。
ウチには悪魔がいる。
「二日酔いに揚げ物はきついですー」
結局時間をかけて、コロッケを10個も食べた悪魔が。




