悪魔がウチにおりまして・733
ウチには悪魔がいる。
チーズにワインを足している悪魔が。
「最近私の扱いが酷いと思うのです」
チーズの中にフランスパンを浸していた羊がしんみりとつぶやく。
「羊さん、パンばかりじゃなくぶっころりも食べてください」
ツッコミは無し、羊が愚痴ってるんだから聞いてあげなさい。
「最近私の扱いが酷いと思うのです」
……2度言ったな。
これは本気かボケか悩ましいところ。
「羊殿、ちーずは苦手でちたか?」
絶対そうじゃないのよ、狐。
「チーズは好きなんですけど。できればフォンデュではなくラクレットの方が」
よぉし、悩んでないね。
「それならどうしたのです?豚角煮はひとり3つまでですからね」
角煮をチーズに入れる!?
なんでそんなハイカロリーフォンデュを!?
「このチーズです。私も出資して取り分が欲しかったのに」
昨日悪魔が転がしてたチーズを削って食べてるんだけど、どうやら羊には声をかけなかったらしい。
「だって羊さん、連絡付かなかったんですものー」
「私が今の時期忙しいのはミミ君も知っているでしょう?」
羊がどんな働き方をしているのか知らないけれど、繁忙と閑散があるのかぁ。
「それならこのチーズも売り切れちゃうの知ってるでしょう?限定3億個しか売ってないのですよ?」
日本の総人口のダブルスコアなんですけど?
「……今年は少ないですね」
これで少ないと申しますか。
「ねぇ、3億って”しか”なの?普通に有り余る数だと思うんだけど」
狐が首を傾げる。
「ニンゲン殿、八百万という考え方を知らないので?」
「なんか、神さまの数だっけ?」
答えに大きく頷く狐。
「左様。それはこちらに来れる神の数。名のある神はその八百万居るのです」
桁が大きすぎない!?6億越えてるの!?
「64億です、ニンゲン計算弱いです?みきゅっ」
あれー?悪魔がいきなり眠ってしまったぞー?
「ニンゲンさん、最近ますますニンゲン離れしてきましたね」
そんな!私は悪魔の首元なんてチョップなんかしてません!
「私、何も言ってないんですけどね」
羊は再びチーズにフランスパンを浸す。
「で、酷い扱いの話は良いの?」
「ミミ君に比べたらまともと思うことにします」
トゲのある言い方だなぁ。
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン!?あと数センチズレてたら戻って来れなかったですよ!?」
大丈夫、見極めてるから。




