悪魔がウチにおりまして・732
ウチには悪魔がいる。
チーズを転がしている悪魔が。
チーズ、チーズだよな、コレ。
私が疑ってしまったのは悪魔が転がしているソレは悪魔の身長よりも大きいからだ。
「……ちーず」
「ニンゲン、写真でも撮るのですか?」
そのサイズのチーズならちょっと撮りたい。
「色々聞きたいんだけど。それどうやって入れたの?」
どう見ても玄関から入れるには太すぎ……なぜそんな太いチーズがあるのだ?
「クローゼットから入れたですー。あっちは多少大きさ融通効くので」
今更知らない機能を告げられましても。
「ニンゲン、手伝ってください。コレを切り分けてご近所に配るのです」
「言っても羊と牛でしょ?そいつらも手伝わせなさいよ」
タダ乗り、行けません。
そう思っていたら悪魔は首を振った。
「違うのです。ロマンス12号と、ごんちゃんママ、あとぐっちゃんに専務なのです」
……ザリガニはギリギリわかるけど、そのほかのメンツ何?
「珍しいメンバーね」
チーズ転がしがひと段落して、汗を拭う。
「みんなで買ったのです。というかこっちの住所持ってるのボクだけだからボクが代理で買わされて」
確かに、みんな……あれ?
「ザリガニ、店持ってるじゃない」
正確には狐オーナーの牛店長だったはずだけど。
「……今度、湯掻いてやるです」
むしろ気付かなかったアンタが悪いでしょ。
「ミミ殿、届きまちたか」
狐が帰ってくると鎮座しているチーズを見上げる。
「ごんちゃん、ママさんどれくらい欲しいっていってましたー?」
「母上は1/8あればよいと。残りは皆で分けて欲ちいそうで」
「えー、良いんです?1番お金出してくれたのにー」
悪魔がそのあたりしっかりしているの、正直意外なんですけど。
「普段、某が世話になっているからと。……ニンゲン殿、解せません」
眉をきゅっとすぼめる狐。わかるよ、どっちかっていうと世話してる側だもんね。
「それなら遠慮なく。えーっと、まず半分に切ってー」
しゅぱんっという音。丸いチーズが半月型に。
「もう2回切れば1/8でー」
しゅぱんしゅぱん!ごとり!
「あ、悪魔さん、何をしているので?」
「え?ニンゲンもできるでしょう?真空切断ですよ?」
できるか!人間だぞ、私は!
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲンは1/36で良いですー?」
え、くれるの?




