悪魔がウチにおりまして・731
ウチには悪魔がいる。
白米をモリモリと食べている悪魔が。
「ニンゲン、ボクは最近ご飯を食べていない気がします」
手に山盛り飯持ちながらよく言う。
「手に持っているのは?」
「違うのです!今食べているだけで普段食べていない気がするのです!」
人聞きの悪いこと言うのはやめなさい。ちゃんといつも食べさせてあげているでしょう。
「ボクのご飯を食べる姿は一定の需要があるはずです!ニンゲン!今日はコメをたくさん食べさせてください!」
「話は聞きました」
玄関からのっそりと現れる牛。
「カギは?」
「ミミさんがコメを食べる姿、たくさんのヒトに見てもらいましょう。ちなみに1杯これくらいなら出せます?」
堂々と無視するな、営業を始めるな。
「1杯30円!?高いです!」
絶対に安いぞー?
「そうですかぁ。それなら食べ放題5,000円でどうです?」
「安いですねっ、そっちでお願いします!」
騙されているのは突っ込まなきゃダメ?
「話は聞きまちた」
出てくるのが狐の時点で不穏なのよ。
「我が蔵に大量のコメがあま、貯蔵されています。いかがでしょう。ミミ殿の食べ放題にお使いいただくのは」
余ってるんだね、採れすぎたんだね。
「ちょっと良いっすかー」
ザリガニまで湧いて出た!?
「ウチで試作のおつまみ、誰かに試食してもらいたいんですけど。1品200円とかでどうです?」
ここまでくると結託して悪魔からひと稼ぎしようとしてない?
「……品物によります」
「ローストマトンです」
「買った!」
悪魔、更なる散財が確定。
「ねぇ、マトンって言った?もしかして」
「羊さんのことで?やるわけないじゃないですかー、あんな煮ても焼いても食えなそうな御仁」
意味が違う気がするけど、生きてるならいいや。
「牛さん、ごんちゃん……えっとルミネール8号」
「タンクすね」
「みんなの気持ち、確かに受け取ったです!ボクは!食べるです!」
かくして、微塵も興味が湧かない、ただ悪魔が食べるだけの会が始まるのでした。
ウチには悪魔がいる。
「もっと!もっと持って来るですー!」
本人が楽しんでるならいっか。




